惨めな人間達よ
藤宮めいは陽気な少女だった。
父は有名な会社に務めていたため、かなり裕福な暮らしを送っており、家へ帰れば母が美味しいご飯やおやつを振る舞ってくれた。
「めい、入園おめでとう」
「おめでとう、今年も嘘つきじゃないこだったかな?」
父と母は微笑みながら心から幼稚園の入園を祝ってくれた。
「うん!パパ!いい子だったよー!ママもありがとぅ!!」
その日はお祝いで豪華な料理を囲んで三人ディナーを食べた。
めいにとってその日が人生で一番幸せを感じた日であり、心に刻んだ思い出となった。
―だけれど、その幸せな家庭の姿はそう長くは続かなかった。
「はい、そうなんです。めいちゃんのお母様がお迎えに来られてなくて……はい、電話も何度もかけていまして…」
めいの担任の幼稚園教諭は電話に耳をあて、心配そうな表情をしていた。
そう、めいの母親が迎えの時間を二時間もオーバーしていたのに一向に来る気配がないのだった。
「めいちゃん、ママ今日お仕事?」
「うんん、ママいつもお家にいるよ?」
「そっかー…じゃあ、お父さんに電話かけてみるね」
母に迎えに来てもらうのを諦め、父に何度か電話をかけて連絡すると、父は仕事を中断して迎えに来てくれることになった。
―数分後
「あ!めいちゃんのお父様。こんばんは」
「すみません、迷惑おかけしました。ほら行くよ、めい」
「先生バイバイ」
父はめいの腕を引き、そのままおんぶして家まで歩いて帰った。
「パパ〜ママは〜?」
家に到着すると、父は見た置き手紙を読んで、立ち尽くしていた。
「………もういい」
それから父は人が変わってしまった。
穏やかだった父はあらっぽく短気な性格となり、酒で溺れる毎日。
めいの幼稚園もあれから通わなくなり、電話や手紙は止まない。
外の人々にはめいが病気で学校へ行けていないとデマを吐き、嘘をついて誤魔化した。
等々部屋の床が見えなくなり、貯金が底を付きそうになったくらいのある日、父はめいに遊園地に出かけようと提案した。
人が変わった父とは違い、めいはこの数年の間何一つ変わったことはなかったので元気なめいは勿論行きたいと答えた。
「パパ、フリーパスは〜?」
「あんなのなくてもパパは楽しいと思うんだ」
「ふ〜ん」
「だから、パパをここで待っててくれるかい?」
「……いいよ」
そのまま、父の指示通り監視カメラもない、人も全く通りはしない外れの地下小屋にめいを待たせた。
地下は凍える寒さで、地上に戻ればネズミの死体やゴミが散乱するという不潔な小屋だったが、めいは約束は何があったも守り続けた。
この場所は父には最適の場所だった。
―めいとバイバイするためには
「ニュースです。先月から西区に住む藤宮めいさんが行方不明になっていることがわかりました。家には父親の姿や最近の痕跡はなく、父親は先月から逃亡を続けていたようです」
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