生きているから。
紬は逆鱗に触れてしまった。
「紬……何でそんな言葉が口から出てくるんだ」
―先程まで黙って見ていた充孝の逆鱗に
普段怒りをあらわにすることのない充孝はただ真剣な目で紬を直視した。
目元は震え、見たこともない共変した紬の姿に思わず涙が出てきそうだ。
「お父さん……違っ」
「何が違うんだ」
「……!」
この場には居ても立っても居られなくなった紬はただひたすら逃げるように走り去る。
「おい待て!!!!!」
―聞こえる
めいの父親の怒鳴り超えが。もうあの怒りを抑えられる自身が紬にはもう、なかった。
―期待には答えれなかった
紬は父子家庭で育ててくれた父を目の前にして、悲しませることをしてしまった。
充孝は妻は亡くなり、幼い頃から離婚が原因で父という存在がなかった。数少ない娘があんな言葉を発したと思うと、充孝は辛い悲しみに浸ってしまうだろう。
―瞳に映った。
めいが大粒の涙を流し、そのまま父親の足にしがみついたまま光を灯らせているのが。
少女は父親にずっと触れていた。
彼女は成仏してしまった、何かの未練を晴らして。
父親の企みにすら気付けない幼き少女は、ただ空へと行ってしまった。
―後悔する
紬は何もすることができなかったと、自分で自分を酷く攻める。
「(何故彼女が勘違いしたまま、本当の幸せを手に入れられなかったのか……それは私の責任だ。あんなにも偉そうな口して、人を助けた気になって…結局私は愚かで惨めな人間なんだ)」
そんな罪悪感や後悔を感じながら、行きで充孝と乗った車には乗らず、電車に揺られて家へと帰った。
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