第39話 プロ野球程度で良いんじゃない

「ふぅぅ……。まぁ、その話は置いといてぇ。それでそのぉ、全ての男子が好きなタイプって言うのは、結局どんな感じなの?」


「簡単ですよ。全ての男子が好きなタイプって言うのはぁ」


「タイプって言うのはぁ?」


「……」


「……」


「ドルルルルルルルル……」


「いやいやいや、ここでドラムロールいらんがな」


「あ、そう。仕方が無いなぁ。それでは発表しますね。全ての男子が好きなタイプと言うのは、『自分の事をスキって言ってくれる女子』ですっ! じゃじゃーん!」


「……」


「え? じゃじゃーん!」


「いやいや、別に最後のじゃじゃーんが聞こえてなかった訳じゃないよ」


「えぇぇ。それじゃあ、なんでそんなに不満顔なんですかぁ?」


「だってさぁ、もし、ホントにそうだとしたら、この世界に『片思い』って言う言葉はもう死語になってるはずだよ」


「おぉ、つむぎちゃんにしては、論理的な展開ですねぇ」


「パル子ちゃんは私の事を、いったい何だと思ってたの?」


「あははは。それ、言わせますぅ?」


「いや、いい。私の事は言わなくて良いから、男子のタイプの事についてもう少し詳しく教えて」


「そうですねぇ、それじゃあ解説しましょうか。まず時代は縄文時代へとさかのぼります」


「マジか? そこからスタートなのぉ?」


「まぁまぁ。まずは聞いて下さいよ。人類はとても長い間、狩猟生活を行ってきたのは知ってますね」


「うん。まぁね」


「その頃の男子は狩猟に出てて、女子は集落で内職をしながら子育てをしていた訳ですよ」


「あーね。そうなんだろうねぇ」


「そんな時代が長く続いたもんですから、男子のステータスポイントは……」


「ちょっと待って、なにそれ、なにそれ。ステータスポイントって何それ」


「いや、余りにもつむぎちゃんがつまらなそうだったので、ゲームの話になぞらえてみました」


「うんうん。良いよぉ。そういう努力は嫌いじゃないよ。で、どうなったの?」


「つまりぃ、男子は野山のけものと戦う訳ですから、自身のステータスポイントを腕力と防御力に全振りして来た訳ですよ」


「ほほぉ、なるほど。確かにヤルなぁ、やるヤル。私も戦士育成の時には腕力全振りするしね。あと、タンクは防御力全振りとか。そしたら盾〇勇者の成り上がり的なぁ?」


「ほとんど伏字になってませんけど、まぁ、そう言う事ですね。となると、それ以外のステータスは最低ランクのままな訳なんですよ」


「へぇぇ、例えばどんなステータス?」


「そうですね。例えば体の中の強さとか、精神的な部分とかですかね。だから、男子はちょっと腐ったものを食べるとお腹を壊しちゃったり、精神年齢が低かったりする訳ですよね。対して女子は外からの物理攻撃には弱い代わりに、体内や精神的には強く成長する様になってるんです」


「いやぁ腐ったモン食べたら、誰でもお腹は壊すと思うけど……まぁ、とりあえずそう言う事にしておきましょうか」


「と言う事で、精神的に弱い男子は、色恋沙汰いろこいざたにおいても、その弱さを露呈ろていする事になっちゃう訳です」


「ほうほう、つまり男子は恋愛に弱いと。でもその話と、男子が好きなタイプってのが『自分の事をスキって言ってくれる女子』って話とは、どうつながるの?」


「つまりぃ、男子は恋愛において自分が傷つく事を異常に恐れます。例えば自分から誰かに告白して振られるなんてもってのほか。どんどん自分が絶対に傷つかない安全な恋愛へと逃げる傾向にある訳ですよ。そう考えた場合に、絶対に失敗しない恋愛対象といえばぁ?」


「相手が最初から自分の事を好きだと言ってくれてる女子って事か!」


「ぴんぽーん。正解です。だから、最初っから好意を持ってますよ! って伝えておくだけで、成功率は軽く五割は越えますね」


「おぉぉ! そうかぁ、なるほどぉ。なんか、むちゃくちゃ説得力があるなぁ。でも五割かぁ。もうちょっと打率を上げる事ってできないの? せめて七割、いや、八割ぐらいまでは欲しいかな」


「金属バット使った高校野球じゃないんですから、そんな高い打率なんてそうそう出ませんよ。プロ野球だって三割打てれば一流なんですからぁ」


「えぇぇぇ。そこを何とか。パル子ちゃんのお知恵でっ!」


「もぉ。仕方がありませんねぇ。それじゃあ、簡単に打率八割を超える方法をお教えしましょうか」


「マジか、って言うか、そんなん、ホントにあるんかい?!」

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