第37話 家族と友達でも良いじゃない

「と言う事で、満場一致をもちまして、私、藤崎紬ふじさきつむぎが、第八十一代、茶道部副部長に任命されましたっ!」


 ――パチパチパチ!


「ムフー! いやいや、ありがとう、ありがとう。ついに私の時代がやって来たって感じですよ」


「何がお前の時代だよ。だいたいウチの部はそんなに歴史も由緒正しくも無いぞ。確か茶道部が出来たのは十年ほど前と聞いているしなぁ。単純に考えても第八十一代と言うのは大げさだな。それに、副部長と言っても結局のところ、パル子に土下座して譲ってもらった役職じゃねぇか。パル子は本当にこれで良かったのか?」


「うふふっ、えぇ構いませんよ。三年生が抜けると部員が二人しかいませんでしたからねぇ。せめて部費が支給される三名以上は確保したかったので、渡りに船と言うものですよ」


「まぁ、言われてみればそうだけど」


「はいはい。そんな経緯なんてどうでも良いんだよ。最終的に私自身がこのポストにおいて何を成すのか……それだけが政治家の良し悪しを決める最大にして、最終的なポイントなんだからね。これからのつむぎの活躍に期待してよねっ!」


「なんか良い感じの言葉を吐いてる様だけど、お前、別に政治家じゃないからな。まずは副部長としての職務を全うして……って言うか、茶道部に入ったんだったら、まずは茶道の礼儀作法から覚えてもらわないとだぞ」


「うぇぇ。そっちの方は上手く何とかしてよぉ。私は主に対外的な活動に重点を置きたいんだよ。国務大臣はこれまで通りパル子ちゃんで、私は主に生徒会対応を行う外務大臣って事でさぁ」


「なんだよ外務大臣って。って言うか、生徒会対応って、お前は何がしたいんだ?」


「そんなの決まってるじゃん。東雲しののめ先輩とお近づきになるんだよ」


「やっぱりそれか。それ以外には?」


「そんなのある訳無いよ。東雲しののめ先輩とお近づきになる事が、私の最大にして、最終的な目標なんだからっ!」


「いやいやいや。ここまで素直で前向きなゲス野郎は見た事が無いね。手段を選ばない女とは、お前の為にある様な言葉だな」


「まぁね。そう受け取ってもらっても良くってよ」


「いや、褒めてねぇよ」


「さて、それじゃあパル子ちゃん。早速ミーティングの準備をお願いするよっ!」


「え? 今から……ですか?」


「そうだよ。今から新生茶道部の第一回全体ミーティングを開催するよ。そして、栄えある第一号議案は、東雲しののめ先輩の攻略法……だからねっ!」


「こらこら、部長を差し置いて何を勝手に話しを進めてるんだ。明日は外部顧問が来校される日だからな。今日は先週教わったお点前のおさらいをするぞ」


「えぇぇぇ。折角副部長になったんだから、少しは私に華を持たせてよぉ。ぶぅぶぅ!」


「もう、十分持たせてやっただろ? それじゃあ、まずは私からやってみせるから。パル子は私の所作に間違いが無いかチェックを頼む」


「はい、わかりました」


「「……」」


「ねぇ…」


「……」


「ねぇ、ねぇ……」


「……」


「ねぇ、ねぇ、ねぇ。パル子ちゃん。……ねぇ」


「なんですかっ、もぉ! 千春ちゃんに聞こえたら叱られますよっ!」


「大丈夫、大丈夫。ちーちゃんは真剣に物事をやり始めると、周りの事が見えなくなるから」


「えぇぇぇ。……それじゃあ、手短にお願いしますよ」


「ねぇ、パル子ちゃん。どうしたら、東雲しののめ先輩とお友達になれるかなぁ。何か良い方法は無い?」


「どうしてそんな事を私に聞くんですかぁ」


「だってさぁ、パル子ちゃんってお人形さんみたいにカワイイしさぁ。うわさによれば、中学の時は彼氏だろうが、彼女だろうが、引く手あまただったって話じゃん」


「それっていったい、ドコのダレ情報ですか!?」


「パル子ちゃん家のママ情報」


「くっ! 意外と確かな情報筋を押さえてますね」


「私を舐めてもらっちゃ困るよ。私はこう見えても友達のご家族と仲良くなるのは得意中の得意なんだからね」


「いや、別に舐めてませんけどね」


「って事で、どうやったら東雲しののめ先輩と仲良くなれるの?」


「いやいやいや。友達の家族と仲良くなれるんだったら、東雲しののめ先輩とも簡単に仲良くなれるでしょうに?」


「それとこれとは問題の次元が違うんだよ。って言うか、それが出来ないから相談してるんじゃあん」


「まぁ、そうなんでしょうけど」


「って事で、パル子ちゃん的に、何か良いアイデアは無いの?」


「えぇぇぇ。……まぁ、無いではないですけどぉ」


「あいや、マジかっ!」

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