第28話 マイノリティって事は無いんじゃない?

「ねぇ、ねぇ。何の話してるの? 私にも教えてぇ」


「おぉパル子か、良い所に来た。いやなにつむぎがだな、小学校の頃の全校集会の後、体育館にわざと一人だけ残って、先生に叱られないかとドキドキしながら、軽イキしていたと言う話を聞いた所なんだが……。まぁ流石にそんなド変態はつむぎぐらいなものだよなぁ」


「えぇっ! つむぎちゃんたら、そんな事してたのっ!」


「ほらなつむぎ、これが一般社会の反応と言うヤツだぞ」


「うそぉ! 絶対ヤッてるってぇ。みんな、一回ぐらいは必ずヤッてるってぇ」


「お前は、そう言うけどな。だとしたら、お前の隠れていた階段の隅には、いつも先客の一人や二人、居た事になるはずだぞ。でも、そこには誰も居なかったんだろ?」


「まっ、まぁね。でも流石に私も全校集会のたびにヤッてた訳じゃないからさぁ。もしかしたら、私がヤッて無い時には、他の娘が来てたかもしんないじゃあん!」


「まぁ、その可能性が無いとは言い切れんが、当時誰ともバッティングしなかったとなると、やはりお前のその性癖は超絶滅危惧種と言われても仕方が……」


「ちょっと待って、千春ちゃん!」


「なっ、なんだパル子。突然大きな声なんか出して!」


「じっ実は……私も一回だけ……一回だけ、ヤッた事……ある」


「うわぁ、なにこの子。このテレテレ具合ったら、めっちゃ可愛い。元々お人形さんみたいにカワイイのに、もう! 抱きしめたくなっちゃうっ!」


「コラコラつむぎ、茶化すなチャカすな。パル子も無理して話を合わせなくても良いんだぞ」


「ううん。違うのっ。私も体育館に一人だけ残って……そのぉ……シタ事……あるし」


「おっ、おぉう。……そ、そうか」


「でしょ、でしょお! あの緊迫感って、ホント気持ち良いんだってぇ。なんだったらちーちゃんも一回体験してみたら? 今からもう一回講堂に戻ろうか?」


「やらん、やらん。講堂にも戻らんぞ」


「でもさ、でもさ。私の時は軽イキだったけど、パル子ちゃんって、色々と大変な事になるんじゃないの?」


「まっ、まぁね。でも……まだ前だったし……何とか……なったかな」


「そうかぁ、前だと大丈夫なんだぁ。でも良く白状したねぇ。エライぞぉ。エライ偉い! パル子偉いぞぉ!」


「えへ。えへへっ、えへへへ!」


「コラコラつむぎ、こんな廊下の真ん中でパル子を抱きしめるな。パル子も困ってるだろ? 可愛がるなら教室に帰ってからにしろ」


「はぁぁい! でも、こんな所で同好の士同じ性癖の人と巡り合えるなんてっ! 今日はなんてラッキーな日なんだろう。まぁ、あえて悔やまれるとすれば、パル子ちゃんがバリネコだって事だけだねぇ。せめてリバだったらなぁ……」


「なに、こんな衆目の中で、どうでも良い事を悔やんでるんだ、全くもぉ。……とは言え、マイノリティだと思っていたつむぎの性癖は、意外とマジョリティなのかもしれんなぁ。少なくとも同じクラスに二人も居た訳だし……」


 口には出さないけど……。

 ここに居る三人全員、経験者って事……だしな。

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