第29話 内緒なのも良いじゃない

「次は体育だっけ? 荷物をもったら、そのまま更衣室に行くか」


「うん、わかったー」「はい、そうしましょう」


「……っていうかさぁ」


「ん? なぁに? ちーちゃん」


「パル子とさぁ……」


「うん、パル子ちゃんと?」


「一緒に更衣室に行くって言うのもさぁ……」


「って言うのも?」


「なんか……慣れたよなぁ」


「そうだねぇ。でも、どっちかって言うと、元から私は気にして無かったけど」


「あぁ、そうか。つむぎは割とそう言う所があるからなぁ」


「あっ、あのぉ……千春ちゃんとつむぎちゃん! なんだかいつも迷惑ばっかり掛けちゃってて……」


「いやいや、パル子が気にする事じゃないぞ。それに、私達はもう友達だし」


「友達……えへっ、えへへへ」


「そうだよ。パル子ちゃんは全然気にしなくて良いんだよ。だいたいウチの学長がLGBBに理解があるからね」


「LGBBって何だよ。LEGEND BBかよっ! それってSDガ〇ダムのプラモデルシリーズの事だろ? 私も詳しくは知らんが、BB戦士の二十五周年記念シリーズとして販売されたモノらしいじゃねぇか」


「あれ? そうだっけ? そしたらLGTMぅ?」


「そうそう、LGTM、LGTM……ってそれ、チャットかなんかで使う Looks Good To Me. の略じゃねぇか。『私はOK良いよっ!』って時に使うヤツだろ? 本当にもぉ、AFAIKだけどなっ! ……あぁ、ちなみに、AFAIKは As Far As I Know. の略で、『私の知る限りでは』と言う意味だぞ」


「へぇぇ。それは知らなかったよ。さすがちーちゃんだねっ! って事は、学長が言ってたのはJPCZだったっけ?」


「それだよそれ、JPCZ。Japan sea Polar air mass Convergence Zone の略の事だな。……ってそれ! 日本海寒帯気団収束帯の事じゃねぇかっ! 冬の日本海側でドカ雪が降る原因ってヤツだろぉ? 大陸性の寒気が朝鮮半島を通過する際に高い山に阻まれて二方向の風の流れに分断されるんだけど、これが日本海で一つに交わる事で、日本海の湿った空気を取り込みつつ、日本海側に大雪を降らせるって言うシロモノじゃねぇか! って言うか、お前の言いたいのはLGBTだろっ! 最後のヤツなんて一文字も合ってねぇぞっ!」


「いやいやいや、JPCZまで乗りツッコミ出来るとは、流石はちーちゃんだね。って言うか、適当にアルファベット並べただけだったけど、ちゃんと意味があるんだぁ」


「いやいやいや、適当にアルファベットならべて、コレに行き着くとはスゴイ確率だなっ! って言うかつむぎっ、適当にアルファベット並べてる時点で、ボケが雑すぎんだろっ!」


「いやぁ、ゴメン、ごめん」


「でも千春ちゃん、本当に凄いですよね。雑学知識量が半端ないです!」


「えへっ、そそっ、そうか? えへへへ。うん。そうだな。パル子、お前も見どころのあるヤツだとは思っていたが、やはり私の目に狂いは無かった様だな。例えばだな、アメリカ英語の場合だと、この略語と言うのはかなり昔からあってだなぁ……」


 ……


「ねぇねぇ、パル子ちゃん。ダメだよぉ、あんまりちーちゃんをおだてちゃあ。調子に乗ると、話が止まんなくなるんだからさぁ」


「あははは。でも、千春ちゃんはとっても満足そうだし、たまには良いんじゃないですかねぇ」


「まぁね。ほんと、パル子ちゃんは、ちーちゃんに甘いなぁ」


「えへへへ。そそそ、そうですかねぇ……」


「そうだよぉ。それにまぁ、ちーちゃんは、あのぐらいちょっとポンコツな所が良いんだけどねぇ」


「あははは。確かにそうですねぇ」


「でしょぉ!」


「はいっ! うふふふっ」


「おいおいおい! コラコラ。なに二人だけで笑い合ってるんだ? 折角私がさっきのボケを解説していたのにぃ。ぶぅぅぅ!」


「あはははっ、内緒だよっ!」


「うふふふっ、内緒ですっ!」


「「ねー!!」」


「えぇぇ! 何だよそれぇぇ! 私も仲間に入れろよぉ!」



 ふたりとも、ちーちゃんがとっても大好き。

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