第7話 マッサージ機能って良いじゃない

「そっ、そうか。聞こえていたか。それは何より。えぇっと、お前は茶器を洗わんでも良いから他の事をしてくれ」


「はぁぁい!」


「……くっ!」


「なんだ……それは?」


「手ブラ」


「即答だな……。つまりそれは、お前の手が私のブラの代わりをしてくれている……と言う認識で間違い無いのかな?」


「うん、そうだよ。だってさっきのカフェラテ事件でブラが洗濯中だからねぇ。ちーちゃんのオッパイ大きいから、ちゃんとブラしておかないと、揺れちゃって作業に支障が出るでしょう?」


「うっ……うぅぅむ。確かに。確かにブラをしていない状態では、諸所の作業に支障が出るレベルではある。確かにその通りだ。その通りなのだがっ! これは如何なものか? これは……これは果して正解なのか!?」


「もちろん、正解だよぉ! 大丈夫。私が後ろから支えてあげるねっ!」


「くぅぅっ! 何たる僥倖ぎょうこう、何たる至福しふくっ。齢十七年を数えたばかりで、人生の最高地点に到達する事になろうとはっ。今後の人生は全て惰性であると今時点でハッキリと断言しておこうっ!」


「何難しい事言ってるのぉ。ちーちゃん、私がサポートしてるんだから、ちゃっちゃと洗っちゃって!」


「あっ、あぁ……そうだな。本来の目的を完全に忘れていた様だ。そうだ、そうだな。つむぎの手を借りる事で、私は今人間として最強の体を手に入れたと言う訳だ、言うなればスーパーサ〇ヤ人と大差無い状態。いや、ミリ単位ではあるが、私の方が凌駕りょうがしていると言っても過言では無いだろう」


「ちょっと何言ってるかわかんないんけど」


「いや、分からずともよい。ここからは私の問題だ。つむぎよ、私の仕事ぶりをしっかりとその目に焼き付けるが良いっ!」


 ――カチャカチャカチャ……うっ。


 ――カチャカチャカチャ……あっ。


 ――カチャカチャカチャ……おほっ。


「ねぇ……ちーちゃん」


「なっ、なんだ? つむぎ


「さっきより速度遅くなって無い? っていうか、さっきから同じ茶器を何回も洗ってるけど」


「くっ……バレていたかっ。ついつい。ついついこの至福のひとときを一秒でも永らえようと、体がサボタージュをしている様だ。くっ。私の体っ! 働けッ! 働くんだっ! これが終われば、一緒に帰ると言うボーナスフェーズが待っているんだぞっ! それでも働かぬのかっ!」


「えぇぇ。ちーちゃんの体、働いてくれないのぉ!」


「あぁ、その様だな。頭では分かっているのだが、体がどうしても言う事を聞かん」


「ふぅぅ……。仕方が無いなぁ。それじゃあつむぎ特製、マッサージ機能で後押しするよっ!」


「まっ、マッサージ機能っ!!」


「えいっ! ブブゥゥゥゥン! ブブブゥゥゥゥン!」


「おっ……おほっ! むほほっ!!」


 ――ガシャン!


 茶碗が割れた……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る