第2話 どくみずいちご

美しい芝の上に、赤いものにまみれたストライカーが横たわっている。


大きな歓声が上がり、人々が火だるまになりながら、ピッチになだれ込む。


僕は、顔の大きいおばさんに、もも裏を蹴飛ばされた。


美しい芝生は赤黒いアリの群衆で埋め尽くされた。


3つ目のゴールが倒れ、審判が笛を投げ捨てた。


巨大な風船が上空に上がり、爆発した。


倒れていたストライカーは首が曲がっている。


人々は耳を塞いで、屈んでいる。


僕はタッチラインの横に倒れていた、スクイーズボトルを口にした。


芝生は毒水苺どくみずいちごのような色で染まり始めた。


喉が渇いたときには、やはり水はうまい。


僕は、スクイーズボトルを天高く放り投げ、ベンチに戻った。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る