脱衣所で出会ったおむつの子

はおらーん

脱衣所で出会ったおむつの子


体を洗い終えて脱衣所に出ると、小学校低学年くらいの女の子とお母さんがいた。楽しそうにお母さんに話しかけているが、お母さんはバスタオルで体を拭くのに一生懸命になっていた。週末の温泉旅館で行楽シーズンから外れているからか、お客さんは少ないように思う。さっきまで入っていた温泉にも、おばさんが数人と、小学生の女の子が一人浸かっているだけだった。


「リオ、早くしなさい」


「えー、ここで履くの?ヤダ」


お母さんが何やら説得しているが、脱衣所の扇風機の音にかき消されて何を話しているかまではわからない。


「誰も見てないから、ね」


「わかった…」


莉緒と呼ばれた女の子は5,6歳くらいだろうか、小学校の低学年くらいにも見える。渋々お母さんの説得に応じると、片足を上げた。ふと私がその親子に目を遣ると、ちょうどお母さんが手に持った紙おむつを履かせるところだった。


「あ…」


女の子と目が合ってしまった。お母さんが持ったおむつは膝のところで止まり、あとは自分で履くように言われたようだった。目が合ったのに気づいた女の子は、すぐさま視線を外して急いでおむつを履いてからシャツを着ようとしている。温泉での宿泊だから安全のためにおむつを履いているのだろうか。それとも毎日のことなのかもしれない。どちらにしても、小学生前後の子にとって、他人におむつを履いているのがバレるのは恥ずかしいだろうなと思い、私も何も見なかったことにした。


そうこうしていると、ガラッと温泉と脱衣所を仕切る扉が開いた。さっきまで浸かっていた女の子が出てきたらしい。そのまま体を拭かずにロッカーに行こうとして、お母さんに注意されている


「ミオ、きちんと拭いてからこっちに来なさい」


「はーい」


適当にパパっと拭くと、お母さんのいるロッカーのところまで歩いていってお風呂の後のジュースをねだっているようだった。


「お母さん先に莉緒連れて部屋に荷物置いてくるから、着替えたら大きなテレビの前で待っといてね」


「うん、わかった」


「おうちじゃないんだから、きちんと着替えてから出てくるんよ」


「わかってるよー」


美緒と呼ばれた子は、めんどくさそうに返事をしてロッカーの中になる着替えを漁り始めた。いつもはパンツ一丁でリビングに来るタイプなのかなと、聞こえてくる会話から勝手に想像する。


「ねえ、もう浴衣着てもいい?」


「一人で着られる?部屋に戻ってから一緒に着替えたらいいじゃない」


「たぶんできるって~、お祭りに行くときに着るやつと一緒でしょ?」


「着れるならいいけど…」


「じゃあ浴衣来てテレビの前で待っとくから!大丈夫だって!」


不安そうな表情のお母さんだったが、早く部屋に戻ろうとぐずる妹に手を引かれて脱衣所から出ていった。親子のやりとりを見ていた私も、自分の着替えに戻る。下着と浴衣を身に着けて髪を乾かそうと大きな鏡の前に座ると、残された女の子がロッカーの前で着替えようとしているのが鏡越しに見えた。


…おむつ?



少女の長い髪は、拭き方が甘かったのか、まだ先から滴がこぼれている。おそらく高学年とくらいと思われる女の子は、別段恥ずかしがる様子もなく、手に持った紙おむつに右足、左足と順番に通した。パンツを履くのと変わらない仕草で、腰まで引き上げた。少女の履いたおむつには、小さく「まえ」の文字があり、ハートマークとリボンの柄があしらわれてる。


あんなに大きい子が履く紙おむつがあるんだ、と感心とも驚きともとれない感情がうずまく。明らかに年齢に不相応な下着は、私の視線を一様に奪っていた。



「あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~」


どうしておむつを履いているんだろうと考えこんでいて、女の子が鏡の横の大きな扇風機の前にいるのに気付かなかった。ニコニコと扇風機の前に立って、声を出して自分の声が変わる遊びを嬉しそうに繰り返していた。腰まで届きそうな長い髪は、大きな扇風機の強風でバタバタと揺れている。上半身は子供用のキャミソールを着たようだったが、下半身はおむつだけの姿でいる。身長は150㎝に届かないくらいだろうか、そんな年齢の女の子が自分のおむつを恥ずかしがるでもなく振舞っているのが不思議で仕方なかった。


「あらあら」

「あの子、オムツ…?」


さっきまで温泉に浸かっていたおばさん達も上がってきたらしい。無邪気に振舞う女の子を見て、無遠慮におむつという言葉が出てくる。


「おじょうちゃん、それオムツ履いてるの?」


「うん…」


急に話しかけられて驚いたのか、おむつの事を言われてシュンとしたのか、人見知りのような返事をしてトコトコと自分のロッカーの方へ戻ってしまった。おばさん達は親への文句か何かを言っているようだったが、女の子には聞こえてはいなかったと思う。女の子も、何か言われたからといって、おむつを隠そうとするわけでもなく、別の扇風機の前まで行って、同じようにおむつ姿のまま涼んでいた。


私が髪のケアをしている間に、おばさん達も着替えて出ていったようで、脱衣所に女の子と二人きりになった。女の子は遊びに飽きたのか、私の隣に来てドライヤーで長い髪を乾かそうとし始めた。


「えっと…」


古い旅館だからか、10円玉を入れて使うタイプのドライヤーが大きな鏡の前に並んでいる。しばらくドライヤーを片手に不思議そうにしていたので、思わず自分から声をかけた。


「10円玉入れるんだよ、持ってる?」


「ううん、持ってない…」


「そっか、じゃあお姉ちゃんが入れてあげるね」


私は手元の小銭入れから10円を取り出して女の子に渡し、「ここに入れるんだよ」と簡単に使い方を教えてあげた。その間も女の子は椅子の上に膝立ちになり、私がお金を入れる様子を無邪気に眺めている。おむつの上から何かを履くでもなく、まだキャミソールとおむつだけの姿でいる。膝立ちになっているからか、おむつで膨れたお尻が余計に強調されていた。


「下、履かなくてもいいの?」


「うん、おむつ暑いから!」


「そ、そうなんだ」


無邪気な返事に私の方が一瞬気圧される。本当におむつを履いていることに羞恥心を感じていない様子に驚いた。そんな私の様子を気にするでもなく、「お姉ちゃんありがとう」と言って、ドライヤーで髪を乾かし始めた。結局他に誰もやってくることはなかったが、髪を乾かし終えるまで、おむつを履いたお尻を突き出したままだった。



私が着替えを終えて脱衣所が出ようとすると、ちょうど女の子も浴衣を着ようとしているところだった。しかし、帯が上手に結べないらしく浴衣に悪戦苦闘しているのが見えた。無理やり結んでそのまま脱衣所を出ようとしたが、浴衣の前がはだけておむつがチラチラ見えるので、そのまま出ていくわけにはいかないと思って呼び止めた。


「ね、ちょっと待って」


お母さんとのやり取りで名前は知っていたが、馴れ馴れしく呼ぶのもなと思った。私の声に気づいて女子が振り返る。


「そのままだとパンツ見えちゃうよ。お姉ちゃんが帯結んであげるからおいで」


一人っ子で身近に小さい子もいない私にとって、自分のことを「お姉ちゃん」と呼ぶのは少々違和感があった。


「ホント?ありがとう!」


女の子はドライヤーの時と同じく無邪気な笑顔を見せて私の方に駆け寄ってくる。


「そのままだと紙パンツ見えちゃうからね。恥ずかしいよ」


つい「おむつ」という言葉を出すといけないと思い、飲み込んで紙パンツと言いなおした。しかし、恥ずかしいと言うのは余計だったかなと心の中で反省した。


「紙パンツ?おむつのこと?」


「ん、そだね」


女の子の家では普段紙パンツという言葉を使わないからだろうか、不思議そうに聞き返された。いくつも年の離れた女の子に少しまごまごしながら、私は女の子がめちゃくちゃに固結びした帯を、しゃがんだ状態でほどき始めた。しゃがんだ視線の先には、浴衣がチラチラとめくれるせいで何度も紙おむつが見える。予想以上に固く結ばれた帯に私は苦戦を強いられる。手持ち無沙汰な女の子との間に気まずさを感じ、手を動かしながら取り留めのない話をし始めた。


「何年生?」


「小松小学校の5年生、樫木美緒」


「ミオちゃん5年生なんだ。小松小学校ってどこにあるの?」


聞きなれない学校名だったが、詳しく聞くと今日は家族で隣県から旅行に来たらしい。妹のことやお母さんのことをいろいろと教えてくれた。


「そうなんだ。ミオちゃんはどうしておむつ履いてるの?」


当たり障りない話題がすぐに尽きてしまい、つい疑問に思っていたことをストレートに聞いてしまった。聞いてから、こんなことを聞いて大丈夫だろうかと不安になって女の子の顔を見たが、変わらずニコニコしていたのでホッとした。


「まだおねしょするから。妹もずっとおねしょ治ってないけど、私の方が長いよー」


「へー。妹もおねしょさんなんだね」


「うん。妹は週に何回かだけど、私は毎日なんだ~。毎日履くのめんどくさくて…」


さっきお母さんにおむつを履かされているのを見ているので知っていたが、あえて知らないフリをする。急に話題を変えるのも不自然だと思い、そのまま続けることにした。


「毎日だと大変だね~、お泊まりとか隠すの大変じゃない?」


「漏れたら朝からシャワーだし、ママも怒るからたいへん~。お泊まりの時は普通におむつ履くし、そんなに大変じゃないよ!」


「お友達にバレないようにするの大変じゃない?」


「だってみんな私のおむつ知ってるし…」


できるだけ気にしないように振舞っていたが、予想外の言葉に一瞬返事に詰まる。


「もう小さい頃からずっとおむつだし、みんな知ってる感じだよ~。普通に同じ部屋でおむつ履くし、他にもおむつの子いたよ?」


「そ、そうなんだ。私が子供のころとは違うのかな…。それにしてもミオちゃんのオムツ、すっごくかわいいね。ミオちゃんくらいの子が履けるサイズもあるんだね」


この子の感覚はどうもわからないなと思いながら、話を続ける。


「うん!妹はビッグだけど、私のはスーパービッグって言うの。ムーニーマンのやつ」


「ムーニーマンって赤ちゃんの?」


「そう」


赤ちゃんというワードに美緒の表情が少し曇ったのを敏感に感じ取る。おねしょやおむつ自体は恥ずかしくなくても、赤ちゃんと言われるのはプライドが傷つくのだろうか。ちょうど帯がほどけたので、それ以上おむつのことを聞くのはやめることにした。


対面でうまく帯を結べなかった私は、帯を持って美緒の後ろに回る。


「ちょっとごめんね。こっちから結ぶね」


美緒ちゃんを後ろから抱きかかえるようにして体の前まで手を回し、浴衣を整えて帯を結ぶ。


「お姉ちゃん、あったかい」


唐突な言葉に少し驚きながら、「ありがと」と短く答える。手を回して美緒に体を寄せた時、クシャっと紙おむつの感触が私にも伝わった。帯を結び終えると、女の子は丁寧にお礼を言って脱衣所を出ていった。








朝から湯船に浸かるのは、贅沢なことだと思う。それが温泉旅館の醍醐味だと思いながら、脱衣所の扉を開けた。朝7時前ということもあり、中には誰もいなかった。


浴衣を脱ごうと帯に手をかけると、脱衣所の扉がガラガラと開く音が聞こえる。内扉に目を遣ると、昨日の女の子が浴衣姿のままカバンを持って立っていた。すぐに目が合う。


「あ、おはよう」


「おはようございます!」


昨晩と変わらずニコニコと笑いながら挨拶をして、私の横のロッカーまでやってきた。


「早いね。昨日はよく眠れた?」


「う~ん、妹がうるさくて」


「旅館のお泊まりは楽しいからね~」


私も昨日よりはリラックスして美緒ちゃんとの会話を楽しむ。美緒も楽しそうに話しながら、浴衣の帯をほどき始めた。浴衣がはだけると、昨日見たのと同じ柄の紙おむつが、昨日以上に大きく膨らんで垂れ下がっていた。私は、ぎょっとして美緒ちゃんのおむつを凝視してしまう。美緒ちゃんもそんな私の様子に気づいて、自分から話し始めた。


「やっぱり昨日もダメだったみたい~。漏れてなかったから、ママが脱衣所で着替えてお風呂も入ってきなさいって言うから…」


昨日ほどは無邪気な様子ではないので、おむつにおねしょしたのを見られるのは少し恥ずかしいのかもしれない。それでも、昨日会ったばかりの他人に、自分の失敗を恥ずかしげもなく話せるのはすごいと私は思った。


「汚いからあっちでやるね」


浴衣を脱いでカゴに入れた美緒は、おねしょで汚れたおむつ一枚の姿になると、カバンを漁って黒いビニール袋を取り出す。高学年ともなるとおねしょの量も多くなるのか、かなり大きくおむつが膨らんでいた。さすがに私の横で、おしっこで汚れたおむつを外すのは悪いと思ったのか、一つ向こうの列のロッカーの方へ小走りで移動した。


ビリッビリっと何かを破るような音が聞こえる。


「おねえさーん、くさいかもしれないから先にお風呂入っててー!」


美緒のお願いに「わかった」と小さく答え、私は湯船に向かった。後から入ってきた美緒は、きちんと先に体を洗って後から湯船に浸かってきた。


「ミオちゃんはいつまでここに泊まるの?」


「今日のお昼には出るってパパが言ってた」


「そうなんだ、じゃあこのお風呂で会うのは最後かもね」


「うん、またお姉さんに会いたいな」


無邪気な少女の率直な言葉はとても嬉しい。


「そうだね、私もまたミオちゃんに会いたいな。その時はひとりで浴衣着れるかなぁ?」


「できるよ!お家で練習しとくから!」


「そっか、楽しみにしとくね」


「おねしょも治ってるかな~?」


「う~ん、それは無理かも!」


2人は笑い合って、そのあとも取り留めのない話を続けた。美緒ちゃんは先に暑くなったようで、一足先に湯船を出て脱衣所で涼んでいた。「浴衣着られる?」と聞いたが、もう帰りの準備で自分の服を着るから大丈夫とのことだった。


「服早く着ないと体冷めちゃうよ?」


私がお風呂から上がって脱衣所に戻ると、美緒は昨日のように肩にタオルをかけて扇風機の前で涼んでいた。「わかったー」と返事をすると、その格好のままドライヤーで髪を乾かし始めた。今日は自分で10円を持ってきたらしい。


一通り髪を乾かし終えると、ロッカーに戻って着替えを始める。黄色いTシャツには、キラキラの文字で何かアルファベットが書かれている。高学年にくらいになると、小学生向けのファッション雑誌に載っているような服を着るようになる。今日はお出かけだからなのか、そんな雑誌で見たことあるようなシャツを着ていた。美緒ちゃんがロッカーに手を伸ばしたとき、私はまた驚くことになった。


「ミオちゃん、それって…」


「え、なに…?」


私は、美緒ちゃんが手に持った紙おむつが、いったい何のために使われるのか不思議でしょうがなかった。


「またオムツ履くの?もう帰るんじゃなかったっけ?」


「そうなの!ひどいよね~。どうせ美緒は車の中で寝ちゃうでしょって。だからお母さんが家に着くまではおむつ履いとけって言うの!」


美緒ちゃんは、おむつを持った手を私の方に伸ばしながら、愚痴っぽくお母さんの文句を言う。


「はしゃいで疲れてるかもしれないからね、履いた方がいいと私も思うよ」


私は苦笑いしながら、お母さんの意見に賛同した。


「遠足のバスとか、帰りはみんな寝ちゃうでしょ?ミオちゃんも念のために、ね」


「たしかになー」


大したことは言っていないと思うが、美緒ちゃんはすぐに納得する。素直な子なのだと思う。お風呂の中でも、「お母さんが、おねしょするのは仕方ないからおむつは恥ずかしくないんだよって教えてくれたんだー」と話していた。おそらくおむつを恥ずかしがる年齢の子を説得する言葉だったと思うが、今でもそれを信じて生活しているらしい。


「じゃあ履くか~」と美緒ちゃんは手に持ったおむつを広げ始める。昨日は履いた後のおむつ姿を見ただけで、実際に履くところを見るとは思っていなかった。


「昨日とは柄違うんだね」


「うん、いっぱい入ってるんだよ~。昨日のリボンのやつはお気に入り!」


「そうなんだ、今日のは何かな?」


「えっと…、ハッピーって書いてるやつ!」


おむつの柄が良く見えるように、両手で広げて見せてくれた。青と黄色の文字でHAPPYと書かれている。


「ミオちゃん、英語読めるんだね~」


「えっとね、お母さんが読み方教えてくれたんだー。幸せって意味だよ!」


本当に天真爛漫という言葉がぴったりな子だなと私は思った。


美緒は、両手で広げたおむつをそのまま足元に持っていき、右足、左足と順番に通した。一度膝まで引き上げると、おむつの内側に手を入れて、丁寧にギャザーを立てた。それから腰まで一気に引き上げた。高学年好みの子供服に、ムーニーマンというのは何か妙な違和感があるなと私は思った。高学年になりスラっと伸びる細い足に、おむつを履いたお尻はどうにも不格好に映る。時計を見ると8時前を指している。着替えている間に何人か朝風呂にやってきたようだが、通り過ぎる人はみんな美緒のおむつ姿を見ては、驚いて二度見するのだった。


「いっぱい人来たからさっさとズボン履いちゃいなよ」


美緒は一瞬、なんで?というような表情をしたが、私の言葉に従ってロッカーからズボンを引っ張り出す。


「そんなショーパンで大丈夫…?」


美緒が手に持っているのは、デニム生地のショートパンツだった。ただでさえおむつの厚みがあるのに、ショートパンツなんかを履けば腰回りから見えたり、シルエットでおむつがバレたりしないだろうかと心配になる。


「うーん、たぶん」


事も無げに美緒はおむつの上からショートパンツを履く。ちょうどおむつが全部が隠れるくらいのところでちょっとキツくなったのか、美緒は何度も体をクネクネしながらショーパンツの中にムーニーマンをねじ込んだ。


「ちょっと見せてみて」


私は美緒ちゃんのショーパンを上から触って、おむつがバレないかどうか確認した。多少厚ぼったく見える気はするが、よく見なければおむつを履いていると気付かれることはないだろう。


「ミオちゃん、ちょっと前かがみになってみて」


「うん」


美緒は立ったまま前屈するように、グッと体を前に倒す。


「あ~…」


背中側のショートパンツからは、おむつのヒラヒラの部分が10㎝近くはみ出している。ショートパンツをできるだけ引き延ばしてはみるが、おむつをすべて隠しきることはできなかった。


「これくらい大丈夫だよー。あとは車で帰るだけだし!」


美緒はシャツの裾を無理やり引っ張っておむつの部分を隠した。シャツから手を離すと、ビロンと生地が戻り、少しだけおむつの白い部分が見えた。


「まぁ、しょうがないか…。車に乗るまではあんまり屈んだりしちゃだめだよ」


「わかった!ありがとう!」



美緒は妙に直立した姿勢のまま、荷物を持って脱衣所を出ていった。そんな美緒を見て、私は心の中がほんのりあったかくなるのを感じた。自分の部屋に戻るとき、美緒ちゃんの家族がフロントの前にいるのが見えた。美緒ちゃんは、しゃがんで床に置いたカバンの中をゴソゴソを漁っていた。ショートパンツからは大きくおむつがはみ出し、HAPPYの文字の上半分までが見えている。あとのことは、お母さんに任せることにして、私は部屋に戻った。

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