第1章 焦る勇者 7
それから約二時間後、俺は魔王の間で、朽ちていく魔王の姿を見ることになった。
「では、なぜ……?」
そう言いながら、俺に一撃で倒された理由も聞けないまま、漆黒の鎧に身を包んだ巨大で邪悪溢れる顔の男は、完全に灰になって消滅した。魔王という悪の象徴で、この世界を牛耳ってきた最強の存在とはいえ、あまりにも儚い最後には同情すら覚えてしまう。
俺は「スキップ」魔法を駆使することで、一気にレベルを99に引き上げた。
スライム戦でスキップした時、「俺がスライムを倒し続けて、レベルが99になるまで」という思いを込めた「スキップ」の発動は、大成功を収めた。それは降り注いだ大量の羊皮紙から実感できた。
最初は目でしか実感できなかったものの、次第に体が軽く感じ、知識も増えたような感覚も次第にではあるが身についた。いつの間にか頭の中に、魔法呪文まで覚えている。
労せずして魔王まで圧倒するレベルを、俺は手に入れることができた。しかし奇妙なことに、懐中時計の時間は変化していなかった。スライムだけ倒しまくってレベル99は相当な時間を要するだろうが、それすらなかったことになっている。
ここで俺は、女神の言っていた「スキップ」もう一つの可能性を考えた。
場所移動を飛ばすこともできるなら、今見たく思い切り飛ばすことができるのではないか? と。
俺は「魔王城までの道中を」という思いを込めながら、「スキップ!」と高らかに唱える。
どんぴしゃり。一瞬でワープすることができた。
正面にそびえるのは、不気味な岩でできた禍々しい瘴気を放つ巨大な城。地下と思しき巨大な洞窟を、それは黒光りで照らしていた。さすがは魔王の城。
まだこの世界に馴染んでいないほどの短い時間とはいえ、俺はこの戦いを終わらせるべく、魔王に立ち向かった。結果はこの通り。
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