第26話 襲撃 3
「放せ! このデカブツ!」
クラリスが怒りながら、ユウヤの背中を叩いている。
「は、離して、ユウヤ君!」
ステラも悲痛な声でユウヤに呼びかける。
二人ともなんとかユウヤから逃れようとするが、丸太のようなユウヤの腕からは逃れられるわけもない。
ユウヤは駄々をこねる二人を無視してひたすら走った。
「お、おい! お前、私達をどうする気だよ! わ、私達が行ったって、どうにもならないんだよ!」
「そ、そうよ! リーナだって本当はわかっているの! でも……あの子は……」
「……そうやって、逃げるの?」
両脇に抱えられた二人は同時に言葉を失ってしまった。
ふたりとも、まさかそんなことを、今日始めて会った巨漢に言われるとは思っても見なかったからであった。
「そうやって、逃げて、責任は全部他人に押し付ける……でもね。それで押し付けられた人間がどんなにツライか考えたことはあるの?」
「そ、それは……」
ステラが沈鬱な表情を浮かべる。ステラとしても……割ることだということはわかっている。
しかし、仕方ないのだ。リーナがなんとかしてくれる……だから、自分は何もしなくても――
「誰かがなんとかしてくれる、自分は何もやらなくていい……そんなことは決してないんだ。それはいずれ自分にも降りかかってくる。無関係ではいられないことなんだよ」
ユウヤがそう言うと、クラリスがわざとらしく大きく舌打ちをする。
「偉そうに説教しやがって……じゃあ、てめぇはどうにかできるのか? ヴァレンシュタインの兵士をお前だったら、どうにかできるのかよ!」
そうクラリスが叫ぶとユウヤはその場に立ち止まった。
そして、両脇に抱えたクラリスとステラをそっと地面に置く。
「うん。たぶん、できるよ」
自信に満ち溢れた声。
それは、野太いものだったが、化物の声には二人の女騎士には聞こえなかった。
そして、その場に二人を置いて、ユウヤは走り出す。
「あ! おい! デカブツ!」
クラリスが呼び止めても、ユウヤは立ち止まらなかった。
「……誰かがなんとかしてくれる、か」
神聖ヴァレンシュタイン王国の門へ向かっていくユウヤの背中を見つめながら、ステラは呟いたのだった。
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