第25話 襲撃 2

 報告を聞いた途端、ノエルの表情が変わる。


 そして、騎士団のメンバー達の表情も変わった。


「え……ま、マジで? こ、ここに来ちゃったの?」


 クラリスが先ほどまでの軽口はどこへやら、青ざめた表情で呟く。


 ステラは何も言わずに深刻そうな表情でうつむいている。


 小さい女の子は王宮の間の隅でガタガタと震え、もう一人は相変らず本ばかり読んでいた。


「よし! みんな、行くぞ!」


 唯一、リーナだけが、果敢に大声をあげ、剣を天に掲げていたのだった。


「勝利は我らに!」


 そのままリーナは走り出してしまった。


「待ちなさい! リーナ!」


 ノエルの静止も聞かずにリーナはそのまま王宮の間を飛び出していってしまった。


「アイツ……な、何やってんだよ……」


「ちょっと、クラリス」


 ユウヤが話しかけるとクラリスはイライラしたようにユウヤを見た。


「あ? なんだよ?」


「リーナは行っちゃったけど……行かないの?」


「え? なんで行くんだよ?」


「だって……君も聖女騎士団でしょ? 団長が行ったのに、君は行かないの?」


 俺がそう言うとクラリスは怒りを露わにする。


「……行くわけないだろ! ま、毎回適当に敵さんとは姫様が折り合いつけてんだ……私達の出番はない」


「え?」


 ユウヤは驚いてしまった。


 なんというか……この騎士団はどうやら団長以外機能していないようである。そうか。戦っていたのはリーナだけということか。


「ステラ」


「え? 私? 何かしら?」


 こわばった表情ながらもステラは懸命に年上らしい笑顔で返す。


 しかし、その無理に強情を張った様子がユウヤには許せなかった。


「……ステラも、行かないの?」


「え……だって……」


「ステラはリーナより年上なんでしょ? なのに、どうしてリーナだけ行かせるの?」


 ステラは俯くだけで応えなかった。


 そもそも、こんな年端もいかない少女達に騎士団を結成させる時点で間違っているとは思う。


 しかし、仲間を見捨てて自分だけ安全な場所にいる、というのは許せなかった。


 ユウヤは後ろの二人を見る。本を読んでいる子も、怯えている子も何を言っても仕方なそうだ……。


 ユウヤは立ち上がった。そして――


「きゃっ!」


「うおっ!?」


 そのままクラリスとステラを脇に抱えて走り出した。


「え!? ユウヤ様!?」


 ノエルの声が後ろから聞こえたがユウヤは無視してそのまま走っていってしまったのだった。

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