第19話 王国へ 3
「え、いや……そんな……」
ノエルはユウヤに深く頭を下げた。周りの群衆から驚きの声があがるのが聞こえる。
一国の主が頭をさげているのだから、その臣民が驚くのも無理からぬ話である。
「……ですが、アナタをこの国に迎え入れるのとは話が違います」
と、再び鋭い目つきになるノエル。ユウヤは自身の巨体を忘れて思わずビクンと反応してしまう。
「アナタが敵側の人間である場合もあります。そうなれば、私はアナタをこの国に迎え入れることができません」
「ひ、姫様! お言葉ですが、この者は――」
「リーナ。アナタは黙っていなさい」
「し、しかし――」
リーナはそれでも何か言いたそうだったが、流石に姫様に睨まれてしまっては何も言えなくなってしまったのか。黙ってしまう。
「さぁ、ユウヤ様? 今一度訊ねます。アナタは敵なのですか? 味方なのですか?」
ノエルが鋭い目つきでユウヤを睨みつける。こんな風に誰かに睨まれたのもユウヤにとっては随分と久しぶりのことだった。
「え、えっと……そうですね。俺はただ、成り行きでリーナに付いてきただけで、特に味方だとか敵だとかは……」
「お、おい! ユウヤ殿! そういう時は嘘でもいいから……」
リーナに小突かれてはっとする。元来そこまで頭の回転が速いわけではないからつい本当のことをいってしまった。
ノエルは相変らずユウヤを睨んでいる。これは、もうダメか。再び、あの暗い森に逆戻りか……
ユウヤがそう思ったその時だった。
「……ぷっ。あ、あははは……!」
「……へ?」
と、いきなりノエルは腹を抱えて笑いだした。呆けてしまったのはリーナとユウヤである。
「え……姫様?」
「……ああ。すいません。でも、アナタの瞳があまりにも正直だったから……」
「え? 正直?」
ユウヤはリーナの方を見て首をかしげる。リーナも不思議そうに首をかしげるばかりだった。
「ええ。よろしいでしょう。アナタの目を見ればアナタが悪い人ではないということはわかります。ようこそ、ヴァレンシュタイン王国へ。この王国の主としてアナタを歓迎します」
ノエルがそういうと観衆からまた大きな拍手が起こった。
こんな風に大勢に拍手されて、歓迎されるなんていうのは、人間の頃でもなかったな……。
ユウヤが感傷に浸っていると、大きなその腕を突付くものがいる。
「ユウヤ殿。ぼぉっとしていないで、このまま城に行くぞ」
「え? 城?」
「そうです。ユウヤ様。アナタも騎士団に入団するのでしょう?」
ノエルの問いかけにユウヤは戸惑ってしまう。
そもそも、自分はこのままその騎士団とやらに入ってもいいものなのだろうか……。
「さぁ、行くぞ、ユウヤ殿」
「ちょ……引っ張らないでくれ、リーナ」
ノエルを先頭に、そのままリーナに引っ張られ、ユウヤは城に向かわされたのであった。
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