第20話 聖女騎士団 1
「……ここが、城?」
ユウヤが案内されたヴァレンシュタイン城は王侯貴族の城というにはあまりにも殺風景だった。豪華な飾りもなければ、綺麗な装飾も施されていない。
「ええ。すいません。民も私自身も困窮しているのです。臣下も、今私につき従ってくれているこの二人だけで」
ノエルは城内の廊下を歩きながら、そういって先ほどから常にノエルに付き従っているメイド服っぽい姿の二人の従者を指す。
王国の姫様の従者が……これだけ? 相当困窮しているようである。
「……一体どうなっているんですか?」
ユウヤが思わずしてしまったその質問にはノエルは答えず、沈鬱な面持ちでユウヤを見る。
おそらく……リーナの言っていたヴァレンシュタイン王国内での内乱……やはりそれが原因なのだろうが……。
「……現在、この国が二分に別れて先頭を行っているというのは、リーナから聞きましたか?」
「……ええ。なんでも、王様が……」
ノエルは一層つらそうな表情になる。ユウヤはまた地雷を踏んでしまった後悔する。
「えっと……すいません」
「いいんです。本当のことですから」
「その……王様ってのは……姫様のお父さんなんだよね?」
「……ええ。実の父です」
「じゃ、じゃあ、なんで……」
「キリシマの仕業です」
と横から口を挟んできたのはリーナだった。今にも怒り出しそうな顔で悔しそうに口ぶりをかんでいる。
「その……キリシマって?」
「ヴァレンシュタイン王国の大臣です。王の側近でした」
ノエルも眉間に皺を寄せてユウヤに話す。
「キリシマは、最初は父の相談相手でした。相談といっても、占いなどで父の今後を占うといったようなことをしていた程度です。それが、段々と幅を利かせるようになり、ついには予言までするようになりました」
「……予言、ですか?」
「ええ。しかも、キリシマに予言は当たりました。明日が晴れになるといえば晴れ。雨になるといえば雨が降りました。作物が豊作になるとか、反乱を企てるものがいるとか……すべて言ったとおりになったのです」
予言がすべて当たる……ユウヤにとってはなんとも胡散臭いように思えたが……この時代レベルだと、それはまさしく神と同列な所業と言えるのだろう。
となるなと、ユウヤにとっては、益々そのキリシマという人間が気になった。
「そのうち、キリシマは父の近くにいる人間……血のつながった人間までもが、父の命を狙っていると吹聴するようになりました。結果、私もその一人にされ、こうして現在、父と国を二つに分断して争っている次第です」
「そんな……」
「始めて聞く方には驚きでしょうが、これが現実です」
はっきりと、冷静にノエルはそう言い放った。
この姫様は、見た目は高貴だが、どこか芯の強さがある。下手をしたら、こんな大柄な自分より強いかもしれない。
ユウヤにそう思わせるほどにノエルの雰囲気は強いものがあった。
「さぁ、ここです」
と、廊下の一室の前に来てノエルは立ち止まった。
「こ、ここは?」
「聖女騎士団の談話室だ」
騎士団の談話室……というのもなんだかよくわからなかったが、おそらく集合して話し合う部屋みたいな認識でいいんだろう。
ということは、ここにその聖女騎士団のメンバーが集まっているということだろうか。
ノエルがゆっくりと扉を開ける。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
と、扉を開けた瞬間に聞こえてきたのは、黄色い悲鳴なのであった。
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