第9話 怪物と聖女騎士 3
「国内……それって、リーナの国のこと?」
「ああ。ヴァレンシュタイン王国内での問題だな。今、ヴァレンシュタイン王国は二つに分かれて戦争をしている。王を中心とした王権派と、姫を中心とした市民派で」
「な、なんでそんな……」
「……王が……いや。そもそもの原因はあの男……キリシマのせいなんだ」
キリシマ。
……なんだろう。どこかで訊いたことのある名前だ。なんとなくだが覚えているような気もする。
だけど……思い出せない。というより、思い出したくない気もする。
「どうした? 顔色が悪いが」
「え? あ、ああ。なんでもない。で? そのキリシマがどうしたって?」
「ああ。証拠はないが、全ての元凶はキリシマだ。あの男は王を唆し、影で操っている。大臣と言う立場にありながら、なんと不届きなヤツだ」
憎くて仕方ないという風にしかめ面をするリーナ。余程そのキリシマが憎いのだろう。
しかし……王国ってなんだ? ユウヤが覚えている限り、ユウヤは近代的な研究所にいた記憶がある。
それが王国って……そもそも、リーナの装備も明らかに時代は中世的なものである。
「ユウヤ殿? どうしたんだ? そんなに考え込んで。何か私の説明で疑問に思うことがあったか?」
「あ……いや。大丈夫だ。リーナの説明で今、この世界がどうなっているかはよくわかった」
「そうか……最も、貴殿は今までこの森で平和に暮らしてきたのだろう? なのに……」
申し訳なさそうに俯くリーナ。
おそらく、自分が来なければずっと平和に暮らせたはずの人間に余計な厄介をかけることになってしまったと嘆いているのだろう。
「だ、大丈夫だよ! お、俺も、久しぶりに人間に会えて嬉しかったし」
「そうか? そういってくれるとうれしいんだが……」
「そ、それより、リーナ。ちゃんと今日は休んでおくんだ。勝手に出歩いたりしちゃダメだ」
「ああ。わかった」
リーナはその美しい笑顔でユウヤに微笑みかけた。
これほど美しいものを見たのは何年ぶりだろう。
まるで砂漠でオアシスを見つけたかのようにユウヤは安らいだ気持ちになったのだった。
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