第8話 怪物と聖女騎士 2
差し伸べられた彼女の手を、ユウヤは思わず握ってしまう。
と、リーナが少し痛そうな顔をしたのを見て、ユウヤは手を離した。
「ご、ごめん!」
「あ、あはは……貴殿は随分と力持ちなのだな」
「ま、まぁね……」
少し困ったような顔をするリーナにユウヤは申し訳なさそうに頭を下げた。
「……さて、挨拶したばかりなのだがな。私はすぐにでもここを出て行かせてもらうよ」
「え? も、もう?」
「ああ。私にはまだやるべきことがあるのでな」
リーナは立ち上がろうとした。しかし、足がぐらついてまたベッドに座り込んでしまった。
リーナの表情が苦悶に歪む。歩こうとした瞬間に激しい痛みが走ったのだ。
「ま、まだ安静にしていないとダメだ……」
「う、うぅ……し、しかし、私にはまだ使命が……」
上言のようにそれを繰り返すリーナ。
使命ってなんだ? こんな俺と同じ年齢の少女がここまでしてやらなければいけない使命って……
ふと、ユウヤの頭に不吉な連想が過ぎる。戦争。
少女の格好はどう見ても戦闘するための装備だ。
だとしたら、自分が知らない外の世界では戦争が起きているということなのだろうか?
しかし、核戦争が勃発するような世界の後に、なんでこんな中世のヨーロッパに逆戻りするような装備で今更争う必要があるんだ?
ユウヤの頭は少し混乱した。しかし、目の前で苦しそうに喘ぐ少女を見てふと我に帰る。
「な、なぁ、リーナ……さん?」
「……リーナでいい。貴殿と私は同い年なのだからな」
「あ、ああ。リーナ。その……リーナはなんでそんな格好しているの?」
するとリーナは目を丸くしてユウヤを見る。ユウヤとしてはそこまで変な質問をした覚えはないのだが。
「当たり前だろう。今は戦時下。騎士団隊長としては常時先頭に赴ける装備をしておかなければ」
「せ、戦闘って……戦争?」
「戦争……まぁ、そうだな。悲しいことだが」
心底つらそうにリーナは目を伏せる。
「な、なんで? なんで戦争が起きているの?」
さすがにユウヤの無知ぶりに違和感を持ったのか、怪訝そうな顔でリーナはユウヤを見る。
「……貴殿、本当に知らんのか?」
「あ、ああ。俺はその……生まれてこの方、ずっとこの森で過ごして来たんだ。だから――」
申し訳なさそうに頭を垂れるユウヤを見てリーナも事情を悟ったのか、ふっと顔を和らげてユウヤを見る。
「いや、そういうことなら仕方ない。理由か……端的に言えば国内の揉め事が原因だな……」
そう言ってリーナは悲しそうな顔をしながら、話し始めたのだった。
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