第10話 この世界の神 1
「うはは! そうか! 聖女騎士団の隊長様もこれまでか!」
そういってさも嬉しそうに笑う初老の男性。頭には王冠を被っているところを見る限りでは、明らかに「王様」という感じをかもし出している。
「はい。しかし、『休戦協定を結びたい』という申し出に、こちらが言った通りわざわざ一人で来るとは……聖女騎士団の隊長もこの上なく間抜けな女ですなぁ」
そういって王冠を被った男性の前で嬉しそうに顔をゆがめるもう一人の男。
爬虫類のような眼球をギョロギョロとさせ、鼻持ちならない慇懃無礼な感じを全身から滲み出させている不気味な男。
ある意味ではユウヤよりも醜い印象を与える男だった。
「うははは! しかし、さすがはキリシマ。お主ほどの策士は、このヴァレンシュタイン王国……いや、世界に一人だけであろうなぁ」
「いえいえ、私は偉大なる王にお仕えしているからこそ、このような働きができるのです。王がいなければ、今の私はありえません」
「しかし、『姫が反逆を企んでいる』とワシに忠告してくれたのもお主じゃ。お主がいなければ今頃ワシは実の娘に寝首を書かれていたじゃろうて」
「そうですねぇ……しかし、姫様も往生際が悪い。ヴァレンシュタイン王国を二分して王に反抗するなど」
「ふんっ! 姫に着いたのは老人と女子供だけだ! アイツに何ができる?」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、側のものに酒を注がせて、王らしき人物はそれをゴクゴクと飲み干した。
その様子を見て、不気味な怪人は嬉しそうに頬を歪ませたのであった。
ここは、ユウヤが暮らしていた小屋から北に数十キロ。
リーナの言っていたヴァレンシュタイン王国の城内である。城内にはいたるところに屈強な兵士が甲冑を纏い警護に当たっている。
その中を、明らかに不釣合いな人物が一人歩いている。先ほどの怪人だ。
怪人は王との謁見を済ませ、そのまま自身の書斎へと向かう。
「キリシマ様!」
と、書斎に向かう途中で怪人は呼び止められた。
「……なんだ?」
そこには、昨日、リーナを追いかけていた男の一人がガタガタと震えながらその場に立ち尽くしていた。
「……どうした? わざわざ姫様を抹殺した報告に来たのか?」
「……い、いえ」
「……何?」
キリシマは鋭い眼光で男を睨む。男は慌てて取繕う。
「す、すいません……で、ですが! か、怪物が……!」
「怪物?」
「は、はい!」
キリシマは相手を見定めるように見て、それから、自分についてくるように合図した。
「……怪物とは?」
「い、いたんですよ! あの森に!」
「森……『怪物の森』か?」
「はい……あれは間違いありません! 俺と後何人かもちゃんと見てます!」
「……わかった。書斎へ入れ」
そう言って男とキリシマは書斎の中へ入っていったのだった。
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