第2話 孤独な怪物 2
少年は自身が元々いた世界をかすかに覚えている。
そして、彼自身の名前も覚えている。
元々いた世界では彼はユウヤ、と呼ばれていた。
しかし、ある日彼は死亡した。
どうして死亡したのか、どうやって死亡したのかは覚えていないが、とにかく死んだのだ。
それは、突然の出来事だった。本当に突然。
ユウヤのいた世界は別段治安が悪かったわけでもないし、荒れていたわけでもない。
それなのにユウヤは突然死んだのだ。
しかし、彼は次の瞬間には目が覚めた。
目が冷めた時には、どこかの施設……研究所のような場所であった。。
彼は動揺した。すると、近くにいた白衣の研究員が彼にあることをつげた。
「君は、異世界に転生したのだよ」
意味がわからなかった。そもそも、そこはどう見ても彼が元いた世界と変わらない感じの研究所であったし、異世界に来たと言う感覚もなかった。
しかし、研究員の言葉によると、ここはユウヤが元いた世界とは違う世界であり、現在その世界では、紛争、戦争が起きているとのことだった。
さらに、一人の人間が異常な権力を手にし、強力に国政を推し進めていた。不安の漂う世界に惑う国民はそのカリスマに引かれ、その通りに行動した……との話だったことをユウヤ自身も微妙に覚えている。
問題はそこからである。
ユウヤがやってきた異世界のその国では、戦争のためにある計画を打ち出した。
それが「怪物兵団」の創設だったのである。
怪物兵団というのは、それまでの人間を兵士一人一人として徴用していた兵隊ではなく、人間より強力な兵士……怪物のような存在の兵士を生み出すことで、より強力な軍隊を作ろうというものであった。
怪物兵団創設のために若い少年、少女、特にユウヤくらいの若者が徴用された。
ユウヤ自身は知らなかったが、ユウヤが転生した先の国は、ユウヤのように異世界から転生してきた者だけでなく、自国民を怪物兵団の兵士として改造しようという動きも出ていたのである。
超越的な人間を手早く、しかも大量に作るにはどうすればいいか。厳しい軍事訓練をするのではとても効率が悪い。よって、人間そのものを改造することによって、強化された兵士を大量に生産しようとしたのである。
研究施設で行われていたことは、簡単に言ってしまえば人体実験だった。
人体の改造、一部の機械化、そして……ユウヤのようにその世界に存在する生物……いわゆる魔物との融合をする、などといった内容の、非人道的な実験が行われていたのである。
ユウヤは人体実験の結果から言えば成功例である。
実験後、魔物と合成されたのだと研究者から言われ、ユウヤはそれが理解できなかったし、信じられなかった。
それに、そもそも自分の姿を見て、それが自分だとは理解できなかったのである。
ともあれ、容姿は醜くなってしまったものの、なんとか人間の理性を保ったまま、魔物と動物の合成結果として研究施設では重宝されていた。
その後、ユウヤは他の成功例とともに簡単な軍事訓練を受けた。
おそらく、こんな簡単な軍事訓練では普通の兵士としては戦場で通用しないであろうが、そこは怪物兵団。
補ってあまりあるほどの潜在能力で戦場では大いに活躍するものだと期待されていた。
しかし、ここで問題がおきた。
研究施設が何者かによる襲撃にあったのである。訓練中だったユウヤは運良くそのまま研究施設から逃げおおせた。
炎上する研究施設を眺め、そのまま逃走し、現在ユウヤが暮らしている森の中の小屋へとたどり着いたのである。
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