第48話 光明

 体が熱かった。


 胸のあたりで何かが燃えているように感じた。


 ゾン美さんのせいでとうとう自分も腐り始めてきたのだろうか。


 これで、正真正銘にゾンビの仲間入り……


 いいや、腐りきって、朽ち果てて、あの雑巾のようになってしまうのだろうか。


 まあそれはそれで、仕方が、ない。


 後悔よりもっと優先させるべきものがきっと傍らにあったせいだ。


 そう観念しながら、ゾン美さんの体とに少しすき間をつくると、別の異様さに気がつく。


 ひかり?


 すき間から仄かに漏れ出してくるようだった。


 すぐさまのけぞるようにしてゾン美さんから離れ、それを確かめる。


 それは決して幻ではなく確かにあった。


 すでに目の前ではゾン美さんの全身がそのひかりに包まれている。


 瞬きを忘れて、またすこし後ずさった。


 そのまま息をのむようにして眺める。


 ひかりはその色彩をまるで命を灯したように変えていった。


 赤から黄、そして、黄から緑へ。


 そして青白いひかりに包まれだすと、目を開けていられなくなるほど急に激しく輝きだしていった。


 思わず左手をかざす。


 輝きは衰えることなく、ますます勢いを増していった。


 やがて開闢かいびゃくを思わせるようにひかりは弾け、辺りを白一色に照らした。


 とっさに目を完全に閉ざす。


 ひかりの残骸が閉じたまぶたの裏にしばらく居残っていた。


 奇妙なまでの静けさ。


 少しの間、そこに身を置いた。


 ようやく手を下ろし、すこしずつ、目を開く。


 暁光ぎょうこうに照らされる中、視界を取り戻していった先にあったのは……


 美しい天使の姿だった。

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