第44話 撞着
空を眺める。
夜明け前、辺りはまだ暗かったが明け方特有の薄白いヴェールのかかった空模様を見せていた。
肌寒い風にあおられながら片桐さんの前に立つ。
向かい合うと、あらためるようにして聞いた。
「ど、どうしてもやるんですか?」
無駄だとは半ばわかっていた。
片桐さんは黙ったままで頷く。
少しでも引き延ばそうとした。
「ど、どうやって浄化するつもりですか?」
「これで……」
片桐さんが手のひらを広げると、スティック状のケミカルライトと思われた一本の棒が形を成した。
片端にはお椀のようなものがくっついていた。
もう片端を掴んでから軽やかに振りまわし、その切っ先を目の前にあてながら続ける。
「この
あやしい名称と安っぽい形状に一瞬気をとられたが、覗いた先にあった真剣な表情がそれらを一斉にどこかへ追いやった。
それでもはじめにあった焦りが何もかもを差し置くようにして同じような当惑を生む。
「ど、どうしてもやらなきゃいけないんですか?」
元の質問に逆戻りしていた。
「むろんだ。それが我らの存在理由なのでな」
そのまま下を向いて黙っていると、肩に手がかかった。
振り向くと、部屋にやってきたときに見せたゾン美さんのあの笑顔がある。
しばらくそれに見入ったままになった。
ゾン美さんの笑みにはいささかも陰ったところが見当たらない。
ここにきて、そんな表情を浮かべることが、どうして、できるのか……理解できなかった。
「さてと、そろそろ始めるか……」
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