第34話 天丼
今度、先手をとったのは……ゾン美さんだった。
「はなのあなが……」
――ん、デジャヴ?
「ひとーつ」
プス。
片桐さんの秘穴にズブリといった。
「くっ、なんだこれは、まるで新感覚」
またまたー、と気分直しにちょっぴりハニカミながら口にしたかった。
ゾン美さんは手を緩めることなく続ける。
「はなのあなが……」
同時に片桐さんが懇願する。
「そ、そんな、まさかやめてくれ、もう、もうこれ以上は……」
いつまで続けるつもりですか? と今度はほとんど呆れ気味に口にしたかった。
「ふたーつ」
ブス。
片桐さんの秘穴は両方が塞がれる。
「ソイヤッ」
ゾン美さんも上につり上げ鼻フックを作り上げた。
えぐい程の勢いと角度だった。
片桐さんが何かフガフガ言っているが、うまく聞き取れない。
ふさわしすぎて、なんだか素敵だった。
「いかがかしら? わたくしのオリジナル拷問は」
こっちはこっちで問わなくてもよい起源が世のなかにはあるということを知らしめる。
あいかわらず片桐さんはもがいていた。
ところがピタリと一瞬だけ動きを止める。
が、すぐさま何かを思い出したようにまたジタバタし始めた。
何かに神経を集中させてみたけれど……そんなことよりもいまはやはりこっち、というような反応の仕方だった。
豚ヅラの自分にさえ陶酔、そんな自分もやっぱりスキ、でも痛い、などという葛藤があったりしたのだろうか。
やがて、さすがの片桐さんもタップしだす。
……必死すぎて若干引いた。
意外なことにゾン美さんはそれに速やかに応じる。
鼻フックが外されると片桐さんがさっそく口にした。
「くっ、こんな屈辱的な仕打ちがあったなんて……でも、悪く、ない」
いやいや、ゾン美さんならまだわかるよ、脳ミソこぼれきったかもしれないし。
でもあなた確実にあるよね、なんちゃって天使じゃん、おばさんじゃん、片桐さんじゃん。
喪失感とともに冷ややかさも最高潮に達していた。
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