第27話 検閲

 ゾン美さんは鼻毛エピソードをおちょくるように、はらわたを鼻毛に見たてて戯れていた。


「はなげ、はなげ、フフフ」


 正直、イラっとしたものの、健気にくり返されたあとにやってきた笑みのこぼし方を見ると、途端にそれは引っ込んだ。


 だが、勘違いしないでほしい。


 これは、あれだ、小さい子をあやすときに必要な包容力に似た何かだ。


 あ、小さい子と言っても、一部における性的慣行の類では決してない。


 ほんとマジだから、これだけは言っておく。


 とりあえず、話しを元に戻す。


「それじゃ、天使の……」


「エン・ゲルリンです」


「それじゃ、ゲロリンさん……」


「ゲルリンです」


「それじゃ、片桐さん……」


「……」


 え? やっぱそうなんじゃないの?


 呆れているせいで口を閉ざしてるようにも見えなかった。


 今まで以上に片桐さんの顔をしっかりと眺めていく。


 まずは細部から。


 痩せこけた頬がよけいにほうれい線を際立たせている。


 尖った顎が一見、理知的さを匂わせるようで、同時に意地の悪さを演出しているようにも見える。


 目元には特徴がなかったが、口元のホクロからは縮れ毛が生えていた。


 首をかしげながら、もう一度全体を見直す。


 限りなく黒に近い気はしたものの残念ながら断定するまでには至らなかった。

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