第18話 古豪

 やあ、みんな、おいどんはよしのすけ。


 九州男児ですたい。


 みんなはよく言うでごあす。


 あんたは立派なモノをもっとるのぉ、うらやましい限りじゃ。


 気持ちんよか、あんしゃんはほんに気もちんよか男たい。


 そげんに素晴らしか笑顔で言われると、おいどんも照れるとです。


 しっかし、おいどんはたまに思うとです。


 なんでみんな丸出しであるかんとですか?


 おいどんのように何もかもさらけ出して生きていけば、窮屈きゅうくつな思いばすることはなかとです。


 こいが、人の生き方ちゅうもんではなかとですか?


 おいどんは、真っ裸で、今日もせっせと、はたけを耕しに出かけるとです。




「ふぅー」


 ゾン美さんは腐臭まじりのため息をついた。


 思いっきりその臭気を鼻で吸い込む。


「よか、こらぁーよか。肥溜めのごつ、よか匂いです」


 賞賛を送ろうとして、ゾン美さんの肩を勢いよく叩く。


 表面にあった得体のしれないヌメりでその手が滑った。


 横っ面に平手打ちがさく裂する。


 そのまま首が外れる。


 そして吹っ飛び、壁に叩きつけられた。


 天を相手にして人を咎めず。


『もうここらで、よか』


 九州男児は、切腹の格好をしながら、潔く身を引いた。


 この後も目まぐるしい人格交代が行われたが、その誰しもが音を上げたという。

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