第17話 憑依 

 ヘイ、ガイズ。


 あたしの名前はキーナ。


 こんなに幼く見えて、じつは、立派なトゥエンティなんだ。


 エヘヘ。


 あたしがどんな人間かって?


 うん、そうだな。


 明るくて元気、かな?


 あと、よく言われるのはオシャンティー?


 なぜか、そう言われちゃう。


 ここだけの話、オシャンティーが何なのかよくわかんないのは内緒だよ。


 約束を守ってくれるみんなには、こっそり、ムフフな秘密を教えちゃう。


 ていうか、ムフフってどういう意味?


 よく、わかんない。


 あ、これも内緒だよ。


 ムフフ。




六根清浄ろっこんしょうじょう


 そう言うと、ゾン美さんは身を起こして、目の前に仁王立ちになる。


 股の間の顔は健在だった。


「ヘイ、ゾン美さん、お顔が下だよ」


 明るく元気に指摘する。


「あ、これは、失礼をば」


 股の間に顔がめりこむと、下の方からモコモコと内側を伝っていく。


 蛇の丸呑みを逆再生しているような光景。


 途中、いくらか、もたついていた。


 ようやく元の位置に顔がやってくる。


 顔のまんなかにははらわたの鼻輪がバッチリ出来上がっていた。


 ワオ! オシャンティー2021、ムフフ。


『消えてよ。このわけわかんない言葉といっしょに、この世からすべてが消えさってよ』


 もう一人の自分がはやくも音を上げた。


 次の自分へバトンタッチされる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る