第9話 禁秘
ゆうぞうは幽霊のくせにまったく幽霊していなかった。
あのオッサンがさ、という感じのオッサンだった。
それでもやりとりする中でいくらかの事情は飲みこめた。
二週間ほど前からオッサンはゾン美さんと隣の空き部屋で同居を始めたらしい。
居場所のないゾン美さんが不憫でたまらず
ほとほと困り果てて、挙句、手短な人間に丸投げすることにしたようだ。
それで白羽の矢がここに立てられた。
それにしてもゆうぞうの奴、人の私生活を勝手に覗き見しやがって……。
あたり前の恥ずかしさに目を塞ぎたくもなるが、同時に他の意味での羞恥心も覚える。
二週間も気づかないなんて……情けない。
ゆうぞうが無事成仏するという約束で、しばらくの間、ゾン美さんがここにいることを了承した。
しぶしぶだったが、バラされるといろいろとヤバい。
なにやらよけいなことまで考えていると、ゾン美さんが口を開く。
「納得していただけたようですね」
当然ですよね、と添えられた気がした。
「して、いません」
受け入れ方は千差万別、拒絶しながら受諾しなければならないこともある。
「え? あれが
ペシペシと自分のお尻を叩く。
なんで知ってんだよぉぉぉおー。
ゾン美、お前もか?
お前もなんか?
恥ずかしさのあまり、悶絶しそうなほどの勢いでゴロゴロと床を転がった。
ピトッ。
何かくっついた。
「う、うわぁぁぁあ、く、腐るー」
はらわたから漏れ出した小さな液だまりが微笑むようにキラリと輝いていた。
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