第7話 聴聞

「続けるよ、ゾンビさん……いや、ゾン美さん?」


「はい、何でしょうか?」


「どういうことだよ?」


「はい? ――と、いわれますと」


「理由だよ。り、ゆ、う」


「ああ、ここに来たわけでございますね? それは――」


 ゾン美さんはここにやってきた背景を説明してくれた。


 天使に追われていること、もし捕まれば浄化されること、そして天使と神様の痴情のもつれ。


 最後の話題は蛇足のようにも聞こえていたが、ひとまず黙って聞いていた。


 それからもうひとつ尋ねる。


「で、いつまでかくまえばいいの?」


「……できれば二百年ほど」


「――出てけ、ここからすぐ立ち去れ、セーマン、ドーマン、悪霊退散」


 両腕や全身を使って十字をつくるほど必死になった。


「嫌ですわ、ほんのゾンビージョークじゃございませんか、フフッ」


 いろいろ無視して先を急ぐ。


「……で実際は?」


「そうですね、それは状況によりますわ」


「どういうことだよ?」


「天使の気配がなくなり次第ということでございます」


「どのくらいだよ?」


「……一週間」


 真実それっぽい期間に正直げんなりしていたが、ゾン美さんは続けざまに言った。


「嫌ですわ、これもゾンビージョークですわよ、フフフ」


 それを聞いて少しほっとする。


「真面目なところ、あと十日というところではないでしょか?」


 ――わからん、なにがゾンビージョーク? 感覚がまったく、わからん。


 いずれにしろ、目に見えないまま絡んでくるイトがうっとおしくて仕方なかった。

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