第4話 腐蝕

 緑色で血色の悪い全身。


 刻まれたようにあるギザギザ聖痕。


 むき出しの乳房、というよりも全裸。


 はらわたがいい塩梅に横っ腹からぶら下がっていたが、乳首は元気に上を向いていた。


 それから……、顔立ちは……、認めたくないものの……悪くはなかった。


「しばらくかくまわせていただけないでしょうか?」


「え?」


 ぶしつけな要望に即座に対応できるはずない。


「心配はご無用です。こう見えてわたくし料理には自信があるんですよ」


 まっすぐな視線に添えられる笑顔。


 そこは心底どうでもいい……と思いつつ、まんざらでもない気分にさせる。


「そ、それじゃ……どうぞ」


 あいかわらずひどい腐臭が漂っていた。


 部屋へ続く通路の途中、横っ腹からはらわたがポロリとこぼれる。


「すみません。この子、ほんと聞き分けがなくて」


 玄関まで目をたどらせると、廊下にねばり気のある液汁えきじゅうが点々と続いていた。


「……ちょっと、……ちょっぉとおー」


 二回目の声量は一回目の三倍を軽く超えていた。


 すぐに奥から清潔なタオルを持ってくる。


 拭き取ろうと屈む。


 思い直してやめる。


 雑巾に取り換える。


 それでも得体のしれない液体を前に躊躇していた。


 いいのか、触れても?


 これ、いきなり手とか腐りはじめないよね?


「どうかされました? 何ならば、わたくしがお掃除いたしますよ」


 手渡すと、雑巾はみるみる腐り、そのままくずれていった。

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