『ちょっと待って下さい!…海って事は円サン、水着ですよね?』


いきなり険しい顔で、当たり前な事を聞いてくる昴クンに。オレは首を傾げる。





『それって…円サンが裸になるって事でしょう?』


いやいや、水着だけどね…。


つまらなそうに眉間に皺を寄せた昴クンが、

年相応でなんとも可愛くって。


そこまで言われて漸く質問の意味に気付き、

口を開こうとしたんだけど─────…







『わっ…!?』


いきなり押し倒され、シャツを捲られて。




『俺は…円サンの身体を誰にも見せたくありません…』


そう熱っぽい台詞と、ギラギラした視線に魅せられてしまったオレは。


あれよあれよと服を根こそぎ剥ぎ取られてしまい…







『これなら、裸になんてなれないですよね…円サン?』


それはもうたっぷりと愛された後、

昴クンは満足そうにオレを見下ろして…そう言い放った。



情事によって残されたのは、身体中に刻まれたいくつものキスマーク達。

Tシャツと水着で、ギリギリ隠せる位置を狙って付けられたソレらを隠すため…


男でありながら、こんな格好で泳ぐ羽目になってしまったというワケでした。





まあ、嬉しかったけどね。

ヤキモチ妬いて、強引にエッチな事してくる昴クンも…さ。







(あ──…いかんいかん、こんなトコで昨日のコトなんか想像しちゃ…)


ちらほらとはいえ、他にも海水浴客がいるって言うのに。


昴クンとの濃ゆ~い夜など思い出してたら。

身体が反応して、大変なコトになっちゃうよ…ウン。








「遅いなぁ~昴クン…」


日陰に体育座りして、昴クンを待つこと10分。

ここからじゃ、海の家の様子はよく判らないけれど。


きっと混み合ってるんだろうと、

ぼんやり海を眺めながら待ちぼうけしていたら…







「円サン…」


「!あっ、昴クンおかえ─────」



砂浜に視線を落とし、砂いじりし始めたところで。

頭上から待ち人の声が聞こえて。


弾かれたようにすぐさま見上げると…






「昴、クン…?」


戻ってきた恋人の様子に、暫し言葉を失う。






「なんか、迷子みたいなんですけど───…」


困り果てたように告げる昴クンの、

腕に抱えられたモノ…。






「んふふ~だぁいすき~!」


昴クンに遠慮なく頬擦りし、

ラブラブ光線を惜しげもなく放っているのは…



小さな女の子で。







「…えらく懐かれたね…。」


「ひとりでウロウロしてたんで様子見てたら、いきなり抱きついてきて…」


溜め息を吐きながら、ゆっくりと砂浜に少女を下ろすと。昴クンはその子に目線を合わせるようにしゃがみ込み、ニコリと微笑んでみせた。






「ね~おにいちゃんおなまえは?」


「俺?昴だよ。」


穏やかに答えると、

女の子はヘンな名前~と無邪気に笑い飛ばす。






「じゃあキミの名前は?」


「ルミはねっ、ルミちゃんだよ~!」


オレが年齢を問えば5才だと、手をパーにして答えたルミちゃん。


迷子のわりには泣き喚いたりする様子もなく、

少女はとても楽しそうに笑っていた。

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