side.Subaru





「すば、る…クン?」



俺の地雷を踏んでしまったなんて、知る由もない円サンは。疑問符を浮かべ、瞳を揺らす。




「そんな気持ち良かったんですか?…ソイツの手…」


「あっ…!」



知らしめるように髪を優しく撫でて。


耳が弱点な円さんのそれを、

態とヤらしい手つきで触れてやると…。

敏感な円さんは、ビクリと大袈裟に身体を跳ねさせ…小さく声を漏らした。


俺のその行為に、昨晩…

いや、朝方まで続いた情事を思い出したのか。

円さんは見る間に厭らしげな色を…その瞳に宿し始める。






「まさか…ソイツに触れられて感じてたんじゃないですよね?」


「ちがッ…そんなんじゃ、なっ…」



意地悪く耳朶を引っ掻いてやれば、円さんは悲鳴じみた声を上げて。

恋人の乱れていく様を見せつけられ…散々吐き出したはずの俺の欲が、際限なくしてまた熱を上げ始める。



俺の醜い独占欲だとは解っているけど。


円さんに関してだけは…

どうしても抑えが効かないんだ。





「またソイツんとこ行って…そんな顔をするつもりですか?」


「あっ、んん…耳ッ、やだぁ…」



髪に触れ、耳元で囁いてるだけなのに。

円さんの顔は見る間に淫らなものになっていく。


こんなエロい顔、誰にも見せられない…

いや、見せたくなんてない。


円さんのものなら何もかも全部、

出来ることなら独り占めしたいくらいだ。






「髪触るだけで勃つなんて…」


「ちがッ…昴君が、さわっ…からッ…!」


「俺…?俺が触るから…円さんは、こんなにヤらしくなるんですか…?」



膝をグリグリと円さんの膨らみに押しあてれば、イヤイヤと首を振って。

その仕草に、俺のモノまでもが熱く硬度を増していく。





「こんな、感じちゃうのはッ…昴君が好きだから、でしょっ…」


「ッ……!」



他の誰かじゃない、俺だからこそ。

触れただけで欲情するんだと告げる円サンは。

どこまでも俺を誘惑し…溺れさせる。


瞳を濡らし頬を紅潮させ…

無意識に欲しがるその様は。


本当に、罪な人だ…貴方は─────…





「昴クン、昴クンっ…」



手を広げ、抱擁を求める恋人に応え…身を寄せれば。

耳元で好きだと訴えてくる円サン。





「オレ、鈍いから分かんないけどっ…」



ごめんねって、何かしたなら謝るからって。

泣きそうな声で必死に抱きついてくる。


そんな円さんに絆される俺は…

降参とばかりに、本音を吐き出すんだ。






「髪…切りたいんですよね?」


「え…?まあ、そうだけど…もしかしてイヤなの?切りに行くの…」



ハイと素直に答えれば、

やはり困ったよう眉を下げる円サン。


どう考えても俺の身勝手な我が儘だろう。

けれど、さっきの円サンの話を聞かされたら…黙って行かせるわけにはいかないんだ。






「俺が…切りますから。」


「え?昴クンが…?」



そう切り出せば、目を丸くする円サン。





「プロの美容師には敵いませんが…一応、晃亮の髪とか良く切ってたので…」



ちゃんとやりますからと、真顔で懇願すれば。

円サンは少しだけ考えてから口を開く。





「そか、うん。じゃあ、お願いしようかな。」


「いいんですか?」


「うん、いーよ。昴クンすっごく器用だし。」



ヨロシクねってあっさり受け入れ、円サンが笑うから。俺も嬉しくてその頬へと擦り寄った。


…と、そこで円サンが言いにくそうに口ごもる。






「それで、さ…昴君の機嫌も治ったことだし?」


「はい?」


「だから、そのっ…コレ…」



ね?と恥ずかしげにしながら、

モゾモゾと膨らんだままのソレを俺の太股へと押しあててくる。


目が合えば、うっとりと期待に満ちた表情で。

俺をまた誘惑してくるから…。





「もう、知りませんよ…そんな顔して…」



手加減は出来ないと、

耳元に熱くキスを落とせば…





「そんなの…しなくていーよ…」



なんて、挑発的に擦り寄ってくる円サン。


ああ、今日はこのまま。

ベッドの上で1日の大半を…過ごす事になりそうだ。







「あ…すばる、く…っ…」


「すぐに気持ち良くしてあげますから…」



梅雨入りなんて寧ろ好都合。

愛しい人を縫い止める為の口実には、もってこいな言い訳に過ぎない。






「愛してます、円サン…」


「んッ…オレもっ、大好き…!」



外は相変わらずの雨模様。

予定してたデートがお預けだと言うのなら…



潔く、巣に籠って…

永く熱く愛し合いましょう?



…end.

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