第22話 2回目のプロローグ 

 体がだるい、頭もだるい。くらくらする。視界がぼやける。

 けれど、体は自動制御プログラムが働くかのように、毎朝決まって地下鉄の満員電車に乗り、勤務地に向かう。

 ふと、正面を向くと車窓にはきれいな景色ではなく、隈が酷く、無精ひげを生やした清潔感のかけらもない男が映る。周りはそれを気にすることもなく、そして私もそれを気にすることもなく、スーツを擦らせながら勤務地の最寄り駅で降りた。

 

 エレベーターの左側で行列の一部になりながら地上に立ち、改札を抜ける。

いつもと同じ地面を見ながらいつも通りの道を進む。

 周りの人波を感じながら、同調し信号の前で止まる。横断歩道の白と黒のストライプを少しぼーっと眺めて、周りが動き出したのを感じて歩き始める。


 足を3.4歩ほど進み始めたとき、右半身に強い衝撃が走った。

視界が飛び、白と黒の世界から、空の青とビルの灰色に移り変わる。

最期に見たのは、白い日傘を刺した女が私に向けていた、大きな黒目だった。

 頭の左側面に強い衝撃が走り、私はそこで意識を失った。


 私がいなくなった世界では、逃げるようにどこかへ行く人、携帯電話で救急者を呼ぶ人、横目に見ながらいつもの道を歩く人、気にせずいつもの日常を送る人がいた。


そうして、私は死んだ。










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