第27話

「すまないが、これからの訓練は中止にさせてくれ」


俺ら4人がいつもの訓練場に行くと、ルベアが立っていて、俺らにそう言った。


「何をするのか想像着くから理由の説明はいらん。でもそれが召喚したことに対する負い目から来てるなら、さっさとやめた方がいいよ。どっち飲み方をしても辺に恨まれるだけだから。今は騎士の方が強かったとしても、いずれ勇者の方が強くなるんだから」


「そのくらい私だって百も承知だ。だが不当な理由で強者が弱者をいたぶることはあってはならん」


「······決意は固いようだね。分かった、もう止めないよ。でも危なくなったら引き返してね」


「注告痛み入る。それで、その間の訓練は実地訓練となる。主に城の外に出て実際に魔物を討伐したり、ダンジョンに潜ってもらう。護衛として騎士を4人つける。男2人、女2人だ。まぁ、リューヤの方が強いが、確実にリューヤより知識も経験もある。期間は定めていない。騎士には陛下との声が届く道具を持っている。だから帰還の合図が来たら、直ぐに帰還してくれ」


「はい、分かりました。ルベアさん、くれぐれも無理はしないでくださいね?」


「ルベアさんは、もう大切、な人だから」


「ユイにリンも、ありがとう。それと、これは私からの餞別だ」


そう言って3人にそれぞれ武器が渡される。


「それらは市井では中々見かけないような貴重な武器だ。装飾はあまりしてないが、それでも3人の力を十全に引き出してくれるだろう」


「はい、俺絶対に強くなって戻ってきます!ルベアさんを手伝えるように!」


「「「???」」」


「手伝う······?あ、ああ、分かった。帰ってきた時は、私を少しは楽しませられるようにな」


蓮は何を言ってんだ?手伝うって、生徒を止めることをか?俺らの本分は勉強······じゃなかった、訓練だぞ?もしや······こいつルベアが何するか分かってねぇな?ルベアも困惑してるし。


「最後に陛下に挨拶をして、その後騎士と合流し城を出るんだ」


「ああ、色々と助かったよ」


「こちらこそ、リューヤから得られることは大きかった」


「またな」


「ああ、次会うまでは強くなっていることを約束しよう。また会う日まで」


そう言って俺らはルベアと別れ、部屋に戻る。俺は特に部屋に残している物は無かったが、唯と凛は女子だから多いかもしれない。


「リューヤ様」


「ん、エミィか」


「よろしければ私もリューヤ様の旅に同行させて頂けませんか?」


「ん?そんなこと出来るのか?」


「いいえ、ですが私もそれなりに戦えます」


「いや、そういう事じゃなくて、国王は許すの?」


「はい。私のような獣の特徴を身に備えている者は獣人と呼ばれ軽蔑の対象ですので、陛下は優しいですが貴族の方々はいい気はしないでしょう」


「だから、陛下もついて行かせられると?」


「はい」


「うーん······分かった。でも騎士の目はどうするの?」


「私はスキル【影術えいじゅつ】を持っていますので───」


そう言ってエミィは目の前からストンと消えた。


「───このように影の中を移動すること、また影の中で生活することもできます」


俺の後ろから話しかけてきた。


「今のは影渡かげわたり、影と影を渡る技です」


「それはすごいな。分かった、ではエミィは基本的に俺の影の中に居てもらって、俺らが危険な時や単純にエミィが飽きた時は外に出ていいぞ」


「分かりました。ですが食事は影の中でも取れますので、影の中に食事を投げ込んでいただければそのまま影の中に入れて食べることができます」


俺はその様子を想像してみる。······少し、いやかなりシュールだ。


「い、いや、食事する時は外に出てしてくれ。ダンジョン内等離れられない場所は例外としてだ」


「分かりました。では」


そう言ってエミィは俺の影まで近づいて来て、先程と同じようにストンと潜った。


「はは、情報収集する上では最強じゃないか?」


俺は蓮達と合流し、国王の元へ向かう。


「ノックする必要があるよな?」


「は?そんなのいる訳ないだろ。おい!入るぞ!」


これが日本だとしたら、893の取り立てと勘違いするところだが、生憎とここは異世界である。しかしながら、これまでそのような型破りな行動をした奴が全くいないため、流石に驚く国王。


「っ!······ノックの必要性を教わらなかったのか?」


「馬鹿言え、面倒だからやってないんだよ」


「そうか。はぁ、ルベアに常識も教えさせるべきだったな。さて、4人にはこれから実地訓練を積んでもらう」


「ルベアから聞いた。だから国王にしかできない話をしろ」


「別れだと言うのに。味気ない。まぁ、よい。4人にはこれから冒険者として様々な場所に行ってもらう。勿論、国内のみだ。その中で冒険者として依頼をやりつつ、ダンジョンで経験を積んでくれ」


「ノルマは?」


「目標のことか?目標は紫の冒険者Cランクの冒険者になることだ。本来ならばかなり厳しい条件であるが、4人ならばできると信じてのことだ」


冒険者で言うなら、丁度中間か。いや、確か上の2つは今は誰もいないから、実質上から二番目だな。


「リューヤは既に知っているかもしれないが───」


ここからはエリザと同じ話をしているため、カット。


「───という訳だ。4人も推理できてると思うが、勇者は金の冒険者Sランクの冒険者になれる素質があり、3人も銀の冒険者Aランクの冒険者になる素質がある。そのための第1歩として実力をみにつけて欲しい。そして生き物を直接殺すことに慣れて欲しいのだ。いざという時に躊躇しないようにして欲しい」


「ごもっともな意見だこと。細かい目標を統括して、紫の冒険者Cランクの冒険者になれば大体は叶うってことだろ?」


「うむ、簡単に言えばそうなるな。そして2つ目はこれは1つ目の目標を達成した後になるが、強力な武具を手に入れて欲しい。3人はルベアから貰った武器を持っておるが、武器だけでは戦闘はままならん。防具があって、道具があって成り立つものだと思っておるだから───」


「自分の戦闘スタイルを見つけて、それにあった武器防具を見つけろ、だろ?」


「───う、うむ。それで───」


「便利な道具などを集めて旅を快適にしろ」


「───ぐぬぬ、その通りだ」


「これで終わりか?」


俺が会話の内容を言い当てたことがよっぽど悔しかったのか、国王は歯を食いしばっていたが


「では、その通りに頼む。騎士は既に城の前におる」


「了解っと、んじゃ、またな」


「騎士の言うことをきちんと聞くようにな」


「俺らは小学生か!」


最後の最後に蓮のキレのいいツッコミが決まり、心なしか国王の顔が満足気だった。小学生って単語がこの世界にもあるのか?これと同様に蓮も少し誇らしそうなのに腹が立った。














「あなた方が俺たちの護衛の騎士か? 」


「ああ、その通りだ。まずは自己紹介だな。俺はルキ。武器は剣と盾を使う。よろしく」


黄色の短髪で快活そうな男が元気よく発声する。


「次は僕か。僕はロッタ 。魔法使いだがら後衛だな。使う魔法は水魔法だ。この杖は魔法を発動する媒介だから、接近戦は戦えん」


青いローブを被り、メガネをした、いかにもな人が淡々と挨拶をする。


「私か。名前はハーム。使う武器は大剣だ。よろしく頼む」


赤髪で背中まで伸ばした長い髪の毛のゴッツイ鎧を着ている女性が話す。


「はぁい。わたくしはリエッタよぉ。後衛の支援魔法使いねぇ。よろしくねぇ」


金髪の間延びした話し方をする女性がゆっくりと話す。


そして俺達も同じような挨拶をする。


「君達がこれからの行動は既に決まっている。まずは3人の冒険者登録をする。着いてきてくれ」














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