第23話 非日常の移り変わり

例の事件が起こったあとは驚くべき早さで物事が進んだ。まず、派閥の表面化。ご飯の時に席は決まっていないので、それぞれの派閥で固まるようになった。そして派閥同士の空気が少し剣呑になっている。派閥は当初の予定通りだったと言っておく。


何より恐ろしいのが、本格的なイジメが表面化してない事だ。既にいじめられている生徒がいてもおかしくないと考えているが、それを誰にもみられないようにやっているだろうと想像するだけで少し恐怖する。


それでも俺達4人は毎日同じようなことの繰り返しだ。魔物を倒したりしていないので、レベルが上がらず能力値も上がらないが、それでも戦闘に慣れてきている。


俺は午前中は冒険者ギルドで依頼を受けたり、グロウェンの元に行きゴブリンの様子を調べたりと基本的に外で行動している。現状俺は怪しまれないようにを調べている。未だ王様から座学の授業は受けていない。俺らをとして扱うならそれが最適。または誤った知識を教えることだ。王様の性格を考えてそんなことは無いと思うが、万が一のためこうして動いている。


そして暫くぶりにグロウェンの元へ向かうと······


「······なぁ、あれはまさかゴブリンか?」


「うむ、その通りだ」


グロウェンはウキウキ顔で答える。俺が初めて召喚したの緑色の背丈も俺よりもかなり小さいゴブリンだったはずだ。


それがなんと今は俺と同じくらいの背丈になっており、色も緑から赤や青などと変色している。


「これはどういうことだ?」


「儂にも分からぬ。だがひとつ言えるのはこ奴らは既にゴブリンではないということだ。何か別の種族に進化でもしたのかのぅ?」


俺はその言葉にビビっと来て、こいつらを鑑定する。するとグロウェンの予想通りゴブリンではなくなっていた。


「グロウェンの言う通りだな。こいつらは【ゴブリンエース】という種族になっている」


「【ゴブリンエース】とな。ふぅむ、聞いたことがないな」


グロウェンでも聞いたことがないのか。エリィは?


『私もです。これまでこの世界で【ゴブリンエース】という種族は存在しませんでした』


マジか。てことは目の前の奴らは相当レアってことか?


『いえ、恐らくですがゴブリンが訓練を行ったことで進化したのだと思います。先日マスターも言っていたようにゴブリンは訓練をしません。なのでゴブリンが訓練を行うことで生まれた種族だと思います』


ふむふむ。そういやそんなことを言ったな。


「ゴブリンは訓練をしないからこれまでこの種族が誕生しなかったのだろうな」


グロウェンもエリィと同じ仮説になったようだ。


「グロウェンの想定では【ゴブリンエース】は更に伸びるか?」


「うむ、伸びるであろうな。儂も唐突にこ奴らが大きくなった時は驚いた。こ奴らは今までの経験を引き継いでおり、尚且つ進化することで知能も働いておる。今まで儂に言われてから行動しておったが、自分で考えて行動しておる。そしてそれらを統括しているのがあの黒の【ゴブリンエース】だ」


俺もあいつに自然と目がいってしまう。それぐらい目立つ個体であり、あの中でも1番に強いと分かる。鑑定するとあいつは【ゴブリンエース】ではなく【ゴブリンハイエース】という種族だった。


「あの黒いのは【ゴブリンハイエース】という種族だ」


「ほう、【ゴブリンエース】の上位互換か、はたまた【ゴブリンエース】を統括する立場なのか、気になるのぅ」


「そこら辺が悩みどころでもあるか。では他の魔物も召喚してみたいな。DP《ダンジョンポイント》はどれくらい余ってる?」


「侵略者が来てないから0のままじゃ」


「は?」


そういったものの、そういえばエリィから説明を受けていたなと納得する。


「その侵略者ってのは?」


「侵略者という定義自体がかなり曖昧だ。ダンジョンの外から攻めて来た者をそう言うのか、それともダンジョン破壊を目的とした者をそう言うのか」


『グロウェンの言う通りです。ですがDPは魔力を変換しているので、適当に魔法を使えばその魔力を吸収します』


そうか。だがそれは効率が悪くないか?ダンジョンコアに直接魔力を送り込めないか?


『確かにそうですね。ならばそのように


ん?どういうことだ?


『エリィがダンジョンコアを管理します』


そんなことできるのか?


『これまでそのようなことはありませんでした。ですが出来ると思います』


なら任せるか。どうすればいい?


『ダンジョンコアに触れるだけで構いません』


俺はダンジョンコアを取り出し、軽く触れる。するとダンジョンコアが軽く光を帯びる。


『マスター、ダンジョンコアとのに成功しました』


そうか。てことは魔力を直接変換できるということか


俺は早速ダンジョンコアに魔力を流し込む。魔力を易々と吸収し、それをDP《ダンジョンポイント》に変換している。


そしてDP《ダンジョンポイント》が1000ポイント溜まったところで止めた。まだまだ余力はあるが、この行為がかなり効率が悪い。魔力10の消費でDP《ダンジョンポイント》が1しか貯まらないのだ。


『ですが正攻法の場合は魔力100でDP《ダンジョンポイント》が1です』


本来なら10倍の効率になっているはずなんだが、等価交換じゃない分少し無駄にしてしまったと感じてしまう。


「リューヤは何をしておる?」


さっきから頭の中での会話しかしてなかったので、グロウェンは置いてきぼりだったな。俺はエリィとの会話とエリィの存在を話す。


「ふむふむ、そのようなことが可能なのか。いや、神に願いを聞いてもらえるのだからそれぐらいはかのうか」


「まぁ、な。グロウェンは他にどんな魔物を召喚して欲しい?」


「個人的な興味で話して良いのならば、オーガやオークがいれば好ましい。ゴブリンと同じで訓練をしないからな。ゴブリンのような進化をするかもしれぬ」


「スライムとかウルフは違うのか?」


「それらの種族は基本的に訓練などせずとも生きることが訓練となっておる。ゴブリンなどは生まれた時はそこそこ大事にされるが、ウルフは生まれた時から一端の狩人となるからな」


「ふむふむ、それもそうだな。オーガやオークはゴブリンの上位互換なのか?」


「そうだな。本来その3種族ともメスが生まれることがとても稀であるから、他種族のメスを拐う。だがダンジョンの中では性欲すらも無くすことが出来るからな。これ幸いと思った訳だ」


「それ以外に似たような種族はいないのか?」


「更に上であればトロルやジャイアント、系統を変えるならばグールやスケルトンがいるな」


「系統を変える?」


「今言ったのを含めて5種族は生きておるが、グールやスケルトンはしんでおる。グールやスケルトンの中には強くなることに未練を残し死んだ者もおるが、基本的に死体の処分を間違えたか、何らかの魔法で無理矢理蘇らせたことでしか発生はしない」


「なるほどな。ならばどの種族でも実験してしみよう。グロウェンも楽しみなんだろう?」


俺は少し口角を上げてグロウェンに聞く。


「ああ、そうだとも。未知の知識を手に入れる時な何時だって楽しいに決まっておる」


「ではそれぞれ10体ずつ出しておこう」


俺はオーク、オーガ、トロル、ジャイアント、グール、スケルトン、をそれぞれ10体ずつ出した。すると当然DPが足りなくなるので、補充して。


オークは毛が生えた豚が二足歩行で立っている感じ、オーガは完全に御伽噺の世界の鬼だな。だが色は1色で灰色だ。トロルは縦にも横にもでかい。縦は2mは確実にある。ジャイアントはそれよりもさらに大きく、3mありそうな感じだ。グールに関しては様々な形があって普通に恐怖だ。片目が無かったり、片腕が無かったりとそういうところまでランダムなんだろうか。スケルトンは骨だった。だが一人一人骨格が違う。もしかすると別の種族の骨なのかもしれない。グールもスケルトンも全員二足歩行だった。






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