第22話 明確な派閥
俺らがこの世界に来てから早いことに1週間が経過した。俺は毎日同じようなことをして過ごしているが、それを退屈とは思わない。むしろ日を追うごとに新たな発見があって楽しく感じる。
しかし俺がかつて予想したようにそのようなことが長く続くはず無かった。
それは俺らが昼食を食べているときだった。俺ら場所から離れたところで食器が割れる音が響いた。その場には王様も居たためルベアの騎士団とは別の騎士団が王様をいつでも守れる配置に着いた。かなり訓練されていて、素人目では少し場所を移動したとしか思えないだろうな。
俺はそのまま視線を移し、
「······異界より来たるは鷹。万物を見抜く野生の執行者」
俺は小さい声で呟き、事の顛末を見る。
「おい、早く持って来いって言っただろ!」
「ご、ごめん」
「ごめん、じゃねぇだろ!このクソ野郎が!弱いお前を俺が守ってやってるのによ!」
とうとう表に出てきたか。あれは生徒会長ではないが、生徒会長の仲良くしているグループのうちの一人だな。上下関係が生まれていたのはもとより予想していた通りだ。だがここは王様の目もあるんだぞ?お前、王様が一言命令するだけであっさり首チョンパだぞ?
俺が内心ヒヤヒヤしていると、王様は何事も無かったかのように食事を進める。騎士もその様子を見て傍観を決め込んだのか、事の顛末を見守っている。
かねてより思っていた。王様も愚者ではないから、このようなことになることは分かっていたはずだ。それなのに何も対策を講じていないのはおかしいと思っていたが、そういうことか。
王様の対策それは単純にして残虐でもあり合理的でもある。それは
まぁ、ラノベの主人公みたいに虐められていたやつがポンポンチート能力に目覚められる訳じゃないし、1番苦労が少なくて結果が得られる選択だと思うけどな。
ま、それを周りはどう思うかだけど。
「祐介君!?あなた、なんてことしているの!?」
やはりここで突っかかる者あり。当然予想はしていた。その名も
「今野センセーかよ。こいつは俺に助けてって言ってきたから助ける代わりに身の回りの世話を手伝えって言ったんだよ。それでもこいつは俺が守るだけ守ってんのに、手伝いは満足にしない。こんなの卑怯だろ?」
「生徒同士立場は対等です!そんなことは先生が認めません!」
「先生が認めないからなんだ?ここは日本じゃないんだ。人権もなけりゃモラルもない。力があれば人を支配することができて、力がなけりゃ媚びるしかねぇんだよ!」
何気に核心を突いた言葉だ。先生は生徒がそんなことを言い出すと思っていなかったのか呆然としている。王様がこの言い合いをBGMに飯をのんびり食ってるのが何よりも腹立つ。
「おい、祐介。先生になんてことを言うんだ。今野先生、こいつのことは友達の俺がちゃんといい聞かすから、この場を収めてくれないか?お前もすまんな」
出た出た、生徒会長お得意の仲裁に入ってその場を一旦納得させたよ。まぁ、納得したのはその周囲であって、今野先生は納得してないけどな。そして俺は恐らく別の派閥のトップを務めているであろう、副会長を見る。それを見ると近くにいる女子生徒と話しているように見える。これは確定かな?後はほかの先生の方だが······。
全員が今野先生を頼るように見ている。今野先生の職業は盗賊王だったな。確かに教師の中だと1番強力そうな名前だし、実際保有しているスキルも多かったな。だが、他の教師はそれで情けないと感じないのか?
その後はピリついた雰囲気となったが、そのまま食事を終えた。その後王様から今日の訓練は中止とし、夕食まで休憩と言われた。なので4人で俺の部屋に集まり話し合いをすることとなった。
「ようやく動き出したか」
「そのようね」
「そう、ですね」
「だがやつは四天王最弱」
「······は?」
この中に1人だけ場の空気を読めてない奴がいるぞー?
「そんなガチな空気出すなって!ただ言ってみたくなったんだよ!」
「唐突に変なこと言い出すなよ。びっくりするじゃねぇか。さてと、ようやく派閥と序列が表に出てきたな」
「ええ、そうね。私の見た限りだと生徒会長、副会長、後は今野先生が派閥のトップだと思う」
「はい、私も、そう思い、ます」
「俺もそう思うぜ。先生達が今野先生を見つめる目が必死すぎて笑いをこらえるのが大変だったぜ」
1人だけ話の趣旨がズレているが······無視が懸命だな。
「俺もそう思った。当初の予想通り、生徒会長は実力があり、その実力を持ってして威張り散らしたい奴らとそいつらに奴隷として扱われている弱い奴ら。副会長は恐らく女子生徒だけが所属しているだろう。先生の派閥には先生は確定だと思う。後は適当に中立派とでも名づけるか。生徒会長軍団に奴隷にされてない連中の集まりだな」
「そう考えたら私達ってかなりアウェーね」
「そんなの今更気にするな。俺らが別の訓練を受けてる時点で時すでに遅し、だ」
「そうだ、時すでにお寿司だ」
「「「············」」」
「おぉい!流石になんか言えよ!」
「いや、なんか、な?」
「蓮君、今のは、ちょっと」
「蓮さんはもう少しギャグのセンスを学ぶべきだと思うわ」
「うん、唯のだけ圧倒的に傷つくからね?気をつけてね?」
「お前も馬鹿なこと言ってないで、頭を使え」
「だってよぅ、もう考え尽くしてるんじゃないか?俺らの予想通り派閥ができて、序列ができる。そしてそれが表に出てきて、それを見た国王はそれを傍観。ここまで予想通りの展開だろ?」
「正直、王様が何もしないのは予想外だったな」
俺達が転移初日に王様の元を尋ねた時に結構言ったつもりだったが、それを聞いた上での判断か?それとも最適解が見つからなかった故の答えなのか?
「だが今回のことで生徒会長もわかったはずだ。王様は俺らの身内争いには関与しないことがな。今はまだ派閥内で勝手にやってるけど、生徒会長のことだそのうち女生徒に手を出すだろうな」
「それが、合法か、非合法化、ですか?」
「相手と合意の上か、それとも無理矢理かって話しよね?」
「うん······あんまり女子がいる中で話したくないようだけど、そういうことだ」
「だがよ、あいつらも多少は理性が残って······無いな」
「絶対に無いな。あったとしてしばらくしたら消える。あいつの口から言ってたしな。人権もモラルもないって」
「そしたら派閥同士の戦争かしら?」
「なんで楽しそうなんだよ」
唯は時々サイコパスな面が表に出るからな。蓮みたいなわかりやすいギャグだったならいいんだが。
「流石に戦争ってレベルまで行かないだろ。行くとしても攻撃アリのいじめだな。例えば男が数人ががりで女生徒をいじめてそのまま······とか、女生徒が数人がかりで男ボコボコにして再起不能にするとかな」
「結局のところは日本であったいじめと大して変わりはないな。それが俺らの考えていより身近にやってきただけだ」
「蓮にして話していまともなこと言うじゃないか」
「蓮にしてはってどういうことだよ!?俺は真面目なことしか言わないぞ!」
「ないな」
「ないわね」
「ない、です」
「あれー?」
話し合いの最後はなんかお笑いのネタみたいになってしまったが、一応現状確認は済ませたし、全員の認識を共通のものにできた。
俺は強力な力を持ってはいるが、1人の力で全てが守れるなんて思っていない。そんなこと身をもって学んだ。だからこそこの3人だけはなんとしてでも守り抜く。《2度も同じ目にあうのは御免だ》。
✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭
男性と女性の区別についてです。男性のことを『男』、女性のことを『女生徒』と呼ぶことについてです。単純に『女』と呼ぶのは何か話の内容に合わないような気もしますし、主人公である柳也にはまだ女を知らない(意味深)という設定がありますので、女性を邪険に扱うことが出来ないという意味でも『女』ではなく『女生徒』と気を使っている、ということで。今日その場合は『女教師』になると思います。作者が忘れて『女』と書いてあっても、
「この作者、バカだなぁww自分で言ったこと守れよww」
とでも思っておいてください。皆さんが呼んでくださっているだけで、書くことの励みになります
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