第21話 国王からの呼び出し

食事の後、今回は4人ともそれぞれの部屋で休むことになった。部屋に戻ると、エミィがそれを知ってか、俺に話しかける。


「リューヤ様、国王様がお呼びです」


「王様がぁ?」


俺は頭の上にいくつかのはてなマークを浮かべた。呼び出される理由なんて、ルベアをボコボコにしたことか、外に外出したことしかないぞ。その事は既にルベアから伝わっていると思うし。


「了解」


とりあえず返事をして、エミィについて行く。エミィの頭に着いている耳に触りたいと思うのは俺だけだろうか。いや、そんなことは無いだろう。この欲望は地球人の誰もが持っている世界のひとつだからな。大事なことを考えているうちに、いつの間にか王様と前話した場所まで来ていた。エミィがノックをして、王様が返事をする。以前と全く同じだ。


「リューヤよ、率直に聞く。ルベアをどのようにして倒した?」


「ルベアから聞け」


俺は王様からされた質問に答えた。


「ふむ、言語が伝わらぬのか。ルベアを倒した?」


「ふむ、言語が伝わらぬのか。ルベアから聞け」


俺は王様からの質問にそっくりそのまま答える。


「リューヤよ、こちらは真面目に聞いておる」


「王様よ、こちらは真面目に答えておる」


「お主は以前ルベアと戦った時Lv1とは思えぬ程の身体能力を持っておった。それに他の勇者とは隔絶した剣技も。それはどのようにして身につけた?」


「そういう人の身の上に関わることを相手に直接聞くことを、俺らの世界では禁止されてたんだぜ?」


「ようやくまともな返事をしたか。だが、そのルールはそちらの世界での話だ。こちらの世界では関係ない」


「王様は屁理屈言うのが上手いな。王様ってのはそうじゃなきゃいけないのか?」


「話を逸らすな。お主のその力、はっきり言って異常じゃ」


「俺の職業は把握してるだろ?」


「だとしてもだ。これまでの歴史を見ても、Lv1で何も学んでいない勇者が騎士に勝ったことは無い」


「なら時代が進むうちに騎士が弱くなったんじゃないか?今は戦争もなさそうだし。騎士の位なんて貴族が金で買ってんじゃないの?」


「我が国でそのような不正は行われておらん」


「そんなことないね。例え王様の部下の騎士が全員実力でなった騎士だとしても、いずれ金で地位を買える時代が来る。国王は国のことを考える必要がある。そんな小さなことに目を向けるのは下っ端の官僚くらい。騎士になるために払う金があるなら、下っ端の官僚を買収する程度の金は当然あるだろうな」


「······」


「思い当たる節があるんだろうなぁ。ま、うちの世界もそんなもんだ。平和ボケした国にとって軍隊は飾りだ。そんで毎回被害を被るのは下っ端の人達。どこの国でも、どんな世界でも人が人である限り同じさ」


「······」


「俺の知識に帝国主義ってのがあってな。簡単に言えば国を攻めて自分の言いなりになる国を作るんだ。戦争は悪い面もあるが、当然いい面もある。勝てば利益があるだけじゃなくて、金の回りが良くなる。まぁ下世話な話だが、戦った後の兵士は気持ち昂り、女を抱きたくなる。そこに娼婦が集い、その人達に必要な物を売るため商会が集まる。そしていずれはそこに人が留まるため大工が集まり、その人々を統率するため領主が生まれ、その村やら街やらを王様が認めて正式な領主となる。それくらい王様だって知ってるだろ?」


俺がひとりで勝手に話してるみたいで恥ずかしいが、王様は何かを考えているようで下を向いている。


「そういう金の巡りが良くなることを俺らの国の言葉でインフレって言ってな。金が巡れば給料が増えるし、国に集まる金だって増える。それに相手の国という明確な敵が生まれるから自国での争いが一時的に止まる。戦争に勝つために貴族も尽くす。それに報いるため報酬を与える。戦争に勝ちやすくするために研究者は兵器を作る。それを買うため国は金を払う。戦争は悪いイメージがつくが、国としてはいい事の方が多いと思うぜ?」


「······学生であるお主が何故そこまで熟知しておる?」


「おいおい、この程度で熟知とは言わないでくれよ。こんなの学生の身分で学べることだ。それに高校2年生の俺よりも、高校三年生の人の方が知ってることが多いんじゃないか?1年長く生きてりゃ、その分多くの知識を蓄えているだろうさ」


「それもそうか」


「んじゃ、俺は帰る」


そのままノリと勢いで部屋を退出する。適当なこと話してたけど、核心の部分は何一つとして話していない。これは完璧な勝利と言えるだろう。














その後も代わり映えしないが過ぎていった。朝起きて、飯食って、外に出て冒険者として活動して、白に戻って飯食って、ルベアとの訓練して、飯食って風呂入って、寝る。そんな非日常が日常同化しようとしていた時、ある事件は起こった



✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭


気付いている方もいると思いますが、前作の柳也のステータスのスキルが


成長率100倍Lvー


と変化していたと思います。これはミスではなく自分で考えた末の結果です。よくよく考えたら成長率100倍にレベルがあることがおかしいと思ったからです。Lv10になったら1000倍になるのか?ってことです。それなら成長率1000倍にすればいいだけの話なので変更しました。もし、混乱された方がいればすみません。


そして今作は少し短くなってしまいましたが、理由としてはこの話で第一章が終わるからです。制作途中で少し話が余ってしまい前作の後につけるにしては長かったので、単独にした。それだけの理由です。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る