第2話 真摯な対応(笑)
俺は声が聞こえた方をできる限り姿を見せないように覗き見る。
「聞こえているか!以外より来たれり勇者よ。我の名はタナス・フォン・ゼルファーだ。我が国ゼルファー王国の国王をしている。勇者方は混乱の最中だと思うが、この奇怪な建物より出て我と会話してくれぬか?」
あれが国王か。今まで日本から出たことないから君主制の国を見た事ないけど、王様って本当にマント来てんだな。んで、その周りにいる取り巻きも物騒なもんを持ってるし下手したら「無礼者!グサッ」だもんな。んー、俺的には先生のうちの誰かが行って欲しいけど、クラスメイト含めてビビり散らかしてんだよなぁ〜。先生でこうなら他の先生もこうだろうな。
でもせっかくステータスが確認できたんだから丸腰であっち行くんじゃなくて色々確認してから行きたいな。
今も王様は呼びかけを続けているが誰一人として答えるものはいない。答えるっていうか、答えられる精神状況じゃないしな。てかこの学校ってラノベ読者はいないのか?いたらこの状況も理解してると思うんだが······珍しい学校だな。
「先生、俺が下行って会話してきますよ」
「え、だ、ダメよ!危険に決まってるわ!」
「でもあの人達ヤバそうですよ。昔風の剣とか持ってますし」
異世界転移したとはまだ言わない。これは現時点で俺だけ、もしくは少数が知ってるアドバンテージだからな。ちなみに俺の教室は3階にあって、この校舎は4階建てだ。俺は自分のカバンを自然な流れで持っていき、階段を下る。
「自分の持ち物は自分で管理したいな。王様だって文明を進めるものは全て確保しておきたいはずだし」
俺はステータスと同じ容量でアイテムボックスの入口を出現させる。その中に入れると。
「ラノベの主人公とかもこんな気持ちなのかなぁ。何がどれくらい入ってるかが何となく分かる感じ」
次に俺は魔法を試そうとする。しかしさっきのように念じるだけでは魔法を発動することは出来なかった。
「んー、どういうことだろ。魔力操作みたいなスキルが必要なのかな?」
ま、そんなのは後で考えればいっか。後は鑑定のスキルか。鑑定ってのはどの程度なんだか。スキルは鑑定できるのかな?
【鑑定Lv.1】
詳細を知ることの出来るスキルの最下位のスキル。
ほえぇ。鑑定ってラノベだと結構レアスキルだと思ってたけど、最下位のスキルなのか。ほかのスキルはどうだろ。
【聖剣術Lv.1】
聖剣の力を引き出すことができるスキルの最下位スキル
【四属性魔法Lv.1】
火、水、土、風の4つの魔法を使えるようになる最下位スキル
【成長率10倍Lv.1】
成長率が増加するスキルの最下位スキル
【アイテムボックスLv.1】
全てのモノを収納出来るスキル。このスキルに位は存在しない
アイテムボックスを除いてほとんどが最下位スキルだな。それとも転移した勇者に与えられるスキルは最下位スキルなのか?
ま、残りのスキルは今は使えないだろ。さてと、王様のところに向かいますか。
俺はちょうど良く正門の前に立っている王様に向かって歩き出す。
「何者だ!」
王様の近くにいる兵士?騎士?から言われる。
「会話しようって言われたから出てきただけだけど?それよりそんな物騒なモン構えて何してんだ。俺ら今授業中なんだけど。そんなでっかい声で言われたら授業に集中できねぇし」
俺は王様の挙動を見る。この程度で「無礼者!兵士(騎士)よ!こいつを殺せ」なんて言い出すなら所詮その程度ってことだ。
「そうか。それはすまなかったな。だがこちらにも引けぬ用がある」
「分かってる。で、学校ごと呼び出すってどんな用なんだ?」
「貴様!陛下に向かってなんて口のききかただ!」
「よい、我らは頼む立場にあるのだ」
「そりゃそうだ。あんたらの頼みを俺らは断ることだってできるんだ。王様は分かってるけど、そこの兵士?騎士?はもう少し勉強した方がいいぜ。王様のそばにいるおまえが馬鹿だと、王様の品格が下がるからな。王様もそこんところは考えた方がいいぜ。前線で戦う部隊じゃないんだ。ただ力があるだけじゃ意味ねぇぜ」
俺がそうか物知り顔に指摘すると、指摘された騎士(もう騎士でいこう)はまるでりんごのように顔を真っ赤にして
「き、貴様あぁ!許さんぞ!」
そう言って腰に差してある剣を抜いて俺に斬りかかってくる。
「おいおい、仮にも勇者サマだぞ。後ろにいる王様の目があるってのに」
「うるさい!貴様の数々の言動、不敬罪として直々に処罰してくれる」
あちゃあぁ。完全に怒らせちゃった。んー、どうしよっか。
───ヒュン
「あっぶな!」
俺はギリギリで回避することに成功する。
「貴様ああ!」
避けたことで尚更相手を激昂させてしまった。
「なんで怒ってんだよ!俺だって死にたくねぇよ!」
俺はとりあえず王様を盾にすることを決意する。王様なら例え暴走してても家臣なら斬らないだろ。そう思って俺は王様の方を見ると、既に他の騎士によって守られていた。
「オイコラ王様!お前も犯人の1人なんだから少しは助けろ!」
俺は騎士の剣を回避(逃げ回るとも言う)していると
「ふむ、ではこれを使え!」
王様は俺に向かって剣を投げてきた。
「何でだよ!一般ピーポーに剣を渡されても使い方わかんねぇよ!」
一応剣道ならやったことがあるけど、相手は自分と同じ技を使ってくる保証はないし、もしかしたら必殺技見たいのがあるかもしれない。
「安心せい、いざとなったら我が止めよう」
「いや、今止めてくんない!?」
俺がそう突っ込むが、王様はその場で静観するようで、じっと俺の事を見守ってる。俺は貰った剣をよく見ると······
「ふざけんな!この剣ボロボロじゃねぇかよ!」
渡された剣はサビもあればコケも生えてる年季だけは入った剣だった。
「クソが、あの王様ぜってぇ後でシメる」
俺は渡された剣を構える。今にも壊れそうな程ボロボロな剣だが、何故かこの剣が安心できた
「死ねえええ!!」
「だから勝手に殺すな。せめて王様の許可取れや!」
この剣だと真正面から受けたら確実に壊れる。相手の剣は見ただけでもかなりいい剣だ。だから相手の剣を側面から斬る。しかし剣を横から当てるまでは良かったが、相手の剣を斬ることは叶わず、その結果俺から軌道を逸らすことには成功する
「クッ!やっぱこの切れ味じゃ無理か」
しかもさっきの手応えからこの剣、本当にあと少しで壊れるぞ!?あの王様なんてモン渡してんだよ!?
「その剣ももうすぐ限界と見た!陛下も殺せと言葉でおっしゃればいいものの。ここで屠ってくれる!」
ええ!王様も俺を殺すためにこの剣ボロボロの剣を渡したの!?
『さっきからボロボロボロボロ言うなー!』
「えっ?」
俺は突然聞こえた声に辺りを見渡す
「目を逸らすとは余裕な!」
「うおっ!」
俺は思わず正面から受けてしまった
───ピキ
剣に亀裂が走る。
「ふっ、お前の命は終わりだあああ!」
相手は怒涛のラッシュをしかけてくる。俺はそれを剣で受けないように回避し続ける。しかし相手の方が技量が上なのか剣で受けなければならないことがしばしば。その度に剣に亀裂が入る
───ピキ
───ビキ
───ビギ
───バリーン!
当刀剣が砕けた。
「死ぃぃぃねえええぇぇぇ!」
その時だった。砕けたはずの剣が再生を始めた。
「なあっ!?」
これには俺も驚いたし、騎士も驚いている。
『ふふん、これでもうボロボロのとは言えないわよ』
また声が聞こえる。今の声は······
「剣の声か?」
俺は剣を見る。先程までの姿とは打って変わって、剣は虹色に光り輝いている。
「虹色の剣か。俺は黒が良かったなぁ」
『黒がいいの?色ならいつでも変えられるけど』
再度剣の声が聞こえて剣の色がガラリと変わる。
「おおっ、すご」
「はっ、何を話しているんだあ!」
そしてまた俺は命を狙われる。面倒だなぁ。
『ふふっ、あの程度のなまくらじゃ、私に傷をつけることも出来ないわ。あんな使い方じゃ剣が可哀想ね』
「本当か?お前の言葉を信じるぞ?」
俺は黒色の剣を構え、騎士と相対する。場には形容しがたい空気が流れ、緊張状態になる。
ふぅ、この空気やっぱり慣れないなぁ。そういやアイツらは元気にやってるかな。俺だけこんな状態になっちまって。アイツらには悪いことをしちまったな。ま、いずれ会えるだろ。
すっと責められてばっかはムカつくからこっちから攻めるか。
俺は本気で走っていき、剣を相手に振り下ろす。
「クッ、剣が丈夫になったからって舐めるな!」
騎士は剣で俺の剣を受けてしまうが、それはこの戦い一の失態だ。俺の剣は相手の剣を真正面から切り落とし、そのまま相手の首に刃が迫る。このままだと騎士を殺しかけたその時だった。
「そこらで良いだろう」
俺の刃に横から割り込み軌道を逸らす剣が。
俺はそのせいで体勢を崩しかけるも、すぐに体勢を立て直し、先程の場所に急いで剣を振る。しかしその剣は受け止められる。
「『え?』」
「中々いい剣筋だ。先程から見ていたが剣を取ったのは初めてじゃないと見る」
俺の剣を受け止めたことにも驚いたが、その受け止めた相手が美しい女性だったのにも驚いた。
「ふむ、そこらで良いだろう。誰が本物の勇者か分かったしな」
王様が謎発言をした。
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