第5話 超展開

「「「うわああああああっ!!!」」」

 再び観客の嘆き声が立川競輪場内に響き渡る。それは実際のレースが行われている弥彦競輪場でも同じだろう。


 審判放送に唖然とするアリサと競輪の神様。二人とも、いや、それ以外にも③番選手が失格になるとは思ってもみなかった客は多いだろう。

「マジで・・・」

「マジで・・・」

 二人で同じことを言うアリサと競輪の神様。


「えっ!待って!」

 不意に意識が戻ったかのように自分が買った車券を確認するアリサ。

「まさか!まさか!まさか!」

 アリサは二車単の車券すべてに目を通した。


「これは・・・!」

 アリサの手には一枚の二車単の車券。それは穴目で押さえていた①②⑧⑨番のBOX車券。つまり、①②⑧⑨の選手の内、二人が一着と二着になっていれば当たりなのだ。

 立川競輪場内に弥彦競輪場からの審判放送が流れた。二着到達の③番が失格のため、結果は⑨―⑧―⑥で確定した。

「ああああああっ!当たりだあああああ!」

 思わず涙がこぼれるアリサ。

 一方、ポカンと口を開けたままの競輪の神様。

「マジかよ・・・」


 寛仁親王牌の結果は大荒れとなった。二車単は、24,540円。三連単は、194,360円。ビッグレースの決勝でここまで荒れるケースは滅多にない。

 落車したのは地元・弥彦(新潟県)の選手。アクシデントがあったので、それを喜ぶようなことをすべきではない。しかし、結果論としてアリサは、競輪の神様の課した『決勝戦で二車単を当てる』という使命をクリアしたのだ。

「おおおおおっ!これで私は元の世界に帰れる・・・!」

 自分で買った穴目車券に感謝するしかないアリサ。予想した展開とは異なったが、結果は結果。彼女は見事に二車単を当てた。

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