第4話 結末

「「「うわああああああっ!!!」」」

 その瞬間、観客の間から嘆き声が響き渡る。

 アリサも絶叫した後、声を失っていた。

 寛仁親王牌の決勝戦。最後の最後。ゴール直前で、落車が発生した。①番選手が落車して、ゴール線を最初に駆け抜けたのは⑨番選手だった。


「ちょっとおおおおおおっ!!!何してくれるのよ!!!神様だからって、そんな手を使うのは卑怯でしょうがあああああっ!!!!」

 競輪の神様に掴みかかるアリサ。彼女は、今の落車が競輪の神様によるものだと直感したのだ。

「うわあああああっ!待たんかい!私は何もしていない!今の落車はレースの展開上の結果じゃあ!放せ、落ち着けって!」

 自らの関与を否定する競輪の神様。一方で、あと少しで予想的中のはずだったアリサは、この結末に納得できなかった。


 落車が発生したので審議になるだろうが、一応のゴール順は⑨番―③番―⑧番。つまり、落車が無ければ③番の優勝だったかもしれないし、彼女の予想した二車単③―⑨があり得たのだ。

「どうしよう・・・。これじゃあ、私は・・・」

 項垂れるアリサ。遠くから審判放送が聞こえる。審議対象選手は、二着到達の③番選手と落車をした①番選手とのことだ。それを耳にして、結局ダメだと思うアリサ。

 上位到達選手が含まれている審議だが、その上位到達選手が審議ではない。このパターンだと大抵、上位到達選手はセーフの場合が多いのだ。


 ゴール前のリプレイ映像が映し出されているが、③番選手に落ち度があるようには観えない。審議はセーフとなるだろう。そう思ったアリサは、この後の自分の身を案じた。

 競輪の神様によって転移した並行世界。ここにはアリサを知る人物も、魔法もない。そんな自分はどうなってしまうというのか。絶望と不安で頭の中が真っ白のアリサ。そんなときだった。アナウンス音と共に審判放送が流れてくる。


『③番選手は失格と判定します』

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