第一章 禁断の魔道士(10)
破魔弓の矢は光の帯をひき禍々しい漆黒の物体めがけ一直線に飛んでいく。
だがそう易々(やすやす)とまかりとおさん、とばかりに矢を叩き落とそうと手を大きくふりかぶった。
が、しかし矢はするりと手をかすめ、その勢いは失速することなく胸のあたりを射ぬいた。
『ギャァーーーーッ!!』
苦痛による断末魔の絶叫が空気をビリビリとふるわせ、それがわずかばかりティアヌたちの皮膚に痛みをはしらせた。
『シャァーーーッ!!』
激化する痛みにともなう苦痛と怒りに身をまかせ精霊は甲板を踏み鳴らす。
その地響きによって船は激しく波間にゆられ、凍り付いた水怪獣の群れに船体がぶちあたりそうになる。
水怪獣すれすれに船体をたもつ船乗りたちの巧みな舵さばきによってあわやの大惨事はまのがれた。
「漆黒の精霊よ……真実の名をとりもどせ」
ティアヌはスクールの魔道図書館にて禁断の書物とよばれる閲覧禁止の書物を特別な許可をもらって読みあさっていた。
これも日頃の優秀ぶりが高く評価されてのこと。
このときほど日頃の行ないの大事さをおもいしったことはない。
ある書物にこういった状況における対処法が詳細にかかれていた。
優しく語りかけ名を思い出させることによって自身をとりもどさせるに限るとか。
それにならって実践あるのみ!
【闇よりも暗き深淵のふちにたたずむ汝の真の名は………】
『…………うぅ…………ッ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます