第一章 禁断の魔道士(10)

破魔弓の矢は光の帯をひき禍々しい漆黒の物体めがけ一直線に飛んでいく。




だがそう易々(やすやす)とまかりとおさん、とばかりに矢を叩き落とそうと手を大きくふりかぶった。




が、しかし矢はするりと手をかすめ、その勢いは失速することなく胸のあたりを射ぬいた。




『ギャァーーーーッ!!』




苦痛による断末魔の絶叫が空気をビリビリとふるわせ、それがわずかばかりティアヌたちの皮膚に痛みをはしらせた。




『シャァーーーッ!!』




激化する痛みにともなう苦痛と怒りに身をまかせ精霊は甲板を踏み鳴らす。




その地響きによって船は激しく波間にゆられ、凍り付いた水怪獣の群れに船体がぶちあたりそうになる。




水怪獣すれすれに船体をたもつ船乗りたちの巧みな舵さばきによってあわやの大惨事はまのがれた。




「漆黒の精霊よ……真実の名をとりもどせ」




ティアヌはスクールの魔道図書館にて禁断の書物とよばれる閲覧禁止の書物を特別な許可をもらって読みあさっていた。



これも日頃の優秀ぶりが高く評価されてのこと。




このときほど日頃の行ないの大事さをおもいしったことはない。




ある書物にこういった状況における対処法が詳細にかかれていた。




優しく語りかけ名を思い出させることによって自身をとりもどさせるに限るとか。




それにならって実践あるのみ!




【闇よりも暗き深淵のふちにたたずむ汝の真の名は………】




『…………うぅ…………ッ』




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