第一章 禁断の魔道士(9)

闇を切り裂き降臨(こうりん)せしめたる背に大きな翼をもつ見目麗しき女体の精霊。




それも六枚羽をもつ天の精霊族。




頭上に光輪をいただく清らかな精霊には不釣り合いな腰からさげた長剣。




肩には月の精霊アルテミスの弓と竪琴(たてごと)。




美しき聖母のごとき微笑をたたえ神々しい。




セルティガは驚愕(きょうがく)にたえかね、口をアングリと開け放ち目の前の精霊を見つめる。




「な、精霊? 精霊使いが精霊を従えられなかったのに…なぜ苦学生が精霊を召喚なんて……」




セルティガ同様、セイラも驚きの色をかくせない。




その見開かれたセイラの瞳は今し方見たものを的確に分析する。




そこが魔剣士とは大いに違う点である。




「あんな精霊……精霊百科大事典にだってのってないわ」




ティアヌは特殊召喚した精霊に命をくだした。




「セラフィムよ、悪しきものを祓え!」




すると精霊は白い翼を羽ばたかせ六枚の羽音が空高く舞い上がっていく。




月光がセラフィムの姿を鮮明にうつしだす。




そのまま上空で静止するとおもむろに月の精霊の弓をその手にとり、一筋の月光を光の矢へと変幻させた。




淡い光をはなつ月光の破魔弓の矢。




それを射かまえる。




弓は激しくコの字型をえがき、漆黒の精霊に狙いをさだめ矯(た)めつ眇(すが)めつ標的に的をしぼる。




ギシギシとのけぜらせ月光の鏃(やじり)が標的を捕らえた瞬間、矢をはなった。



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