例え神でも来るなら殺す

@mozaiku1

第1話

とある集合住宅地の一室で寝ていた少年は電子音に起こされた。

(……仕事か。今回の集合は随分早いな)


ベッドから起き上がった少年は簡易的な栄養食を口に放り込むと、シャワーを浴びて職場に行く準備を始めた。

(前回の作戦終了からまだ4日程度しかたっていない。もう少し体を休める時間が欲しいものだな…)

体調が悪いわけではないが、一度仕事に出ると2、3週間、長ければ1か月単位で従事しなければならない仕事にため息が出る。それでも十分に手当てが出ているので、文句をつけても仕様が無いことではあるが。


部屋を出て、仄暗い外の道を職場に向かって歩く。まだ朝の早い時間だが店舗を持つ人物や運搬業者などは仕入れなどにいそしんでいて、まばらではあるが人通りが全くないわけではない。

(多少ではあるが、一時期より物流が通ってきている。前回の作戦の恩恵は大きかったようだな。)

そんな景色を見ながら少年は職場に向かって足を速めた。


住宅街から少し離れた商業区のある一店舗「アルマ商会」に到着すると、少年は建物の裏口から建物に入った。


「ん?ああ、おはよう、レンカ。今回は随分と速い呼び出しだったな。」

中に入ると商会の仕事をしていた優しそうな青年は笑顔で挨拶してきた。

「おはようございます、セルガさん。確かにいつもより期間が短いですね。…何かありましたか?」

少年、レンカは挨拶を済ませるとセルガに呼び出しの内容を聞こうとした。

「それについては後で会長から話があると思うよ。とりあえず2階の会議室に行ってくれるかい?」

セルガは少し思案した後、レンカにそう答えた。レンカ自身もここで話が聞けるとは思っていなかったこともあり素直に会議室に向かった。


「よお、レンカ!やっぱりお前も呼び出されてたか!俺はもう少し長い休みが欲しかったぜ…」

会議室に入るとやたら元気のよいレンカと同じくらいの少年が話しかけてきた。

「おはよう、ファルガ。確かに休みは欲しいが…それだけ重要な話があるってことだろうし、諦めて聞いていこう」

「まあそうなんだけどな…」

ファルガもわかっているのか、特に食いついては来なかったが、やはり多少なりとも不満があるようだった。

「おはようーレンカ。そんなうるさいの放っておいて、こっち来て座って」

声のしたほうに視線を向けると、青みがかったきれいな髪の端正な顔立ちの少女から手招きをされていた。

「おはよう、ハオリ。前回の疲れはないか?」

「うん、ないよ。ありがと。」

「その前に俺への暴言の謝罪は!?」

「うん、それもないよ」

「ひでぇ!」

「仲いいな、お前たち」

ファルガとハオリのいつものやり取りを苦笑いしながらレンカも席に着いた。

「おはよう、レンカ。お前は前回の疲れがないか?」

席に座ると今まで口を開いていなかった強面の男がレンカに挨拶をしてきた。

「おはようございます、ガレスさん。挨拶が遅くなって申し訳ないです。ええ、体調は問題ありません。いつでも出動できる状態です。」

レンカはファルガやハオリより少しかしこまった返答を強面の男、ガレスにした。

「そうか、それは何よりだ。他のものも大切な技師ではあるが、お前は特に貴重な魔技師だ。体調の管理は怠らないようにしろ。」

「ええ、了解です。」


技師と呼ばれる者たちは、大きく分けて3種類に分別できる。

一つ目が機械技師(機工技師)。軍事用の兵器や銃火器など機械技術による整備や製造をできる技師や医療技術を持つ技術保持者のことを言う。高度な技術を持つ技師は光学兵器など最新の技術を研究、製造できる。ファルガも言動は多少アレだが、若くして高度技師に足を踏み入れている優秀な機械技師である。

二つ目が魔術師。この世界には大気中や海中の元素のひとつに魔素(マギア)と呼ばれる粒子があり、人類の発展に大きく貢献してきた。人類はマギアを使用して魔術と呼ばれる事象を引き起こせる技術を持ったが、魔術の使用者には適性が必要であり、おおよそ適性を持つ割合は人類の3割から4割程度である。これらの適性を持ち、魔術の使用を行使できるものを魔術師と呼ばれている。因みにハオリは優秀な魔術師である。

三つ目が魔技師。魔術適性を持ち、魔術を行使できるものであり、機械技師の能力を保有、さらに機械技術の機工に魔術の技術を付与した、魔道具の作成ができるものを指す。魔術師適性があるものしかなることができず、さらに高度な機械技術を収めている必要があるため、非常に希少な人材といえる。


そんなやり取りをしていると、会議室に女性が入室してきた。年齢は20代後半から30代前半にかけてだろうか。切れ長の目に手入れのされた肩まで伸ばした黒髪の女性である。

「おはよう、諸君。前回から間の置かない呼び出しに謝罪する。」

端的ではあるが、申し訳なさが入り混じった表情で挨拶を述べた。

「おはようございます。謝罪は不要です、会長。それよりも今回の議題についてご説明をお願いします。」

ガレスは黒髪の女性、会長の挨拶にそう返すと、会長は苦笑いで答えた。

「相変わらず仕事人間だな、ガレス。まあ、今回は緊急的に集まってもらったものだから、まずは報告と今後の方針、作戦について協議しよう。」


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