エヴァンス公爵家に向かう途中で
「……」
「……」
私は今、エヴァンス公爵に会うために馬車でエヴァンス領へと向かっているのだが、私の向かいには何故かレオス様がいる。私が要求したのはメイドさんであり、うるさかったお姉様の婚約者では決してない。私にどうしろって言うんだ、まったく…
「レオス様?本日は私なんかのために、わざわざ迎えに来ていただきありがとうございます。お姉様ではなく、私であったことは申し訳ありませんが、エスコートをよろしくお願いしますね?」
「…そんな話し方はしなくていい。サリア…こっちの侍女も事情は知っている」
「サリアと申します。本日はアリシア様のお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
「サリアさんね。よろしくお願いします」
「私のことはサリアとお呼びください。それに口調もわざわざ直さなくて結構ですよ?」
これは…レオス様の言う通り私のことはわかっていると言うことですか。それにこの感じ…ずっと品定めされているような感じがする。私を警戒?しているわけではないし…なんなんだろう?言葉にするのは難しい。
「…それと、この前はすまなかった。お前の含みが分からず、ずっと突っかかって迷惑をかけた」
「謝らないでください。それに…レオス様がああいう態度であったからこそ、私は信用しようと思えたのです。あそこで、笑顔で挨拶されていたら、たぶんお姉様に合わせていませんでした」
あの日に合わせたのは安全だと思ったから。そうでなかったならば、何日か会って会話から探り出すしかなかった。それほどに状況がわかっていなかったのだから…
「それは…よかった…のか?」
「あとはそうですね。一つあげるとするならば、相手に保護対象が囚われているとわかっているのならば、下手に出た方が良いのではないかと思いました。相手が逆上して保護対象を傷つける可能性があるわけですし…」
「すまねぇ…」
「あと、人の話を最後まで聞かず、乙女の部屋を勝手に開けるのは紳士としてどうかと思いました。お姉様が着替え中だったらどう責任を取るつもりだったのですか?それと、案内された部屋が罠だった場合はどうするのですか?中にはお姉様ではなく、父の部下だったら?あなたが部屋に入った後、入り口ではロック様を人質に取られても仕方がなかった状況でしたよ。もう少し考えてから行動してもらわなければお姉様に迷惑がかかるのですが――」
「ああ、もうわかった!それに一つじゃない!俺が悪かった。謝る」
「そうですか?」
もう少し言いたいことがあったのですが…仕方がありません。今度の機会にとっておきましょうか。私がまだ貴族である時に会えたら…ですが…
「それよりもロックって誰だ?あの時にいたのはリオ「レオス様?」…ああ、リオン・ロックのことだったな。あいつは俺よりも強いからな。もっと上手く立ち回るだろう」
サリアが名前を呼んでからレオス様の雰囲気が変わった?それに明らかに付け足した家名。目も合わせようとしない。サリアを見るとニコニコとしているだけだし…
「サリア?」
「なんでしょうか、アリシア様?エヴァンス領はまだ少し時間がかかりますよ?」
だめだ、サリアからはお姉様と同じ感じがする。絶対に何も言ってくれないんだろうなぁ。はぁ…
一体、ロック様って何者なんだろう。それに、サリアはどうしてレオス様を止めたのかな…
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