物語の仮説
「なあ、お前はシェリーの話をどう思う?」
「レオス様はお姉様の話を信じていると思っていたのですが、違ったのですか?それに…」
サリアをチラリと見る。私が疑いすぎなのかもしれないけれど、お姉様の前世の話を知る人はできるだけ少ない方がいいと思うんだけど…
「信じてはいる。シェリーがあの時、俺に嘘をつく理由なんてないしな。後、サリアは大丈夫だ。この話を知っている」
「たとえそうであっても、あまり人前でこの話をするべきじゃないと私は思うのですけどね…それで、レオス様は私に何を聞きたいのですか?」
「…いや、俺はシェリーの話を聞いてそんな未来にしたくないって思った。俺に何ができるか分からないが、できることはなんでもしようと思った。それで、お前はどう思ったのか…気になって…」
「私は…父と母の所業の後にお姉様の話を聞けば、私もそんな人間なんだと言われているような気がしていました」
あの時、私は今まで通りの生活でよかったのにと思っている中で、物語の私はお姉様の全てを欲しがっていました。そんな風に考えれたら楽になるのかもとも思ったこともある。
「それは…」
「ですが、それよりも疑問に思うことがあります」
「疑問?」
「はい。お姉様が読んだという物語は途中である、もしくは結果をお姉様が覚えていないのではないかと考えています」
「…どうしてそう思ったんだ」
「お姉様が言っていたのです。シェリアがアリシアをいじめているという嘘を広めていたのはアリシア自身だったと、嘘つきを物語の主軸に置くには変だと思いませんか?」
「?」
この方は…分からなくてもせめて顔に出さなければいいものを…
「はぁ。お姉様を守るために体を鍛えるのはいいですが、もう少し腹芸や考えを顔に出さないようにした方がいいですよ?これからもお姉様の婚約者でいたいなら…ですが」
「ぐっ、わかってる…」
「…話を戻します。私を主人公のままにしておいた時、物語の終わりはなんだと思いますか?」
「終わり…それは…結婚か?」
「…そうですね。だけど、思い返してください。私の結婚相手は姉から奪った男。その男と結婚して、めでたしと終わる物語はあるでしょうか?いじめられた姉の最後は?それに、公爵はあなたのことをどう思っているのか。快く思っているのか、追い出したのか。聞いていますか?」
「…いや、そんなことは一度も…」
ない、でしょうね。お姉様も覚えているのなら話してくれていたでしょう。それは覚えていないか、知らないかのどちらか…だけど、言えることは一つ。
「この物語の主人公は私ではなく、お姉様。正真正銘、私がこの物語の悪役なのですよ」
「なっ!」
驚くことは何もないでしょう。お姉様は自分が悪役令嬢だと言っていましたが、それは勘違いか、それとも途中までしか前世を引き継げていないか。どちらにせよ関係はありません。
「物語の最後はお姉様を助け出した王子様といったところでしょうか。ですが、それなら辻褄が合います。あの公爵様が婚約者を取り替えるなどといった愚行を許すはずがありません。裏で動いているとなると納得はできます」
「物語の俺は父上に見限られているということか…」
「間違っていると思いますか?」
「いいや、納得だ。俺もそこは引っ掛かっていたが、何も思いつかなかった。リオンが望んで、んっ、言っていたように、やっぱお前はすげえな。こんなことまで考えているなんて…」
「ど、どうして、ロック様が出てくるんですか…」
お姉様が変なことをいうから少し意識してしまったではないですか。違います。私は一人。誰がなんと言おうと私はこの仮説にそって行動する。それが一番早くお姉様に日常をお返しできるはずだから。
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