誘い
「シア、お前に嬉しい知らせがある」
「なんでしょうか?」
今日はいつにも増して父はご機嫌だ。まあ、頭の中はいつもご機嫌なのだが…
声もいつもより高く、嬉しそうにしている。
「喜べ!エヴァンス公爵から直々にシアと話がしたいと言ってくれてな。あの時にシアのことを気に入ったらしくてな。気前よくえんじ…ごほんっ、褒めてくださっていたんだ」
「まぁ!それはとても嬉しいですわ!」
最初に会った時は父や私はよく思われていないかった。それなのに援助を続けるということは私の意図に気づいて、お姉様を守るために継続した…?
それよりもこの家で援助がいる状態とはどういうことなのかがとても気になる。お姉様に返すときに借金だらけにされていても困るのですが…
本当に父は生粋の貴族なのでしょうか?頭の作りが不出来すぎるのでは…
「それでだな。シアを屋敷に招待したいと言ってくれていてな。どうだ、参加してくれるか?」
「ええ、もちろんですわ!私もレオス様に会いたいですし…」
「そうか!シア一人だけだと言われているのだが、それでも大丈夫そうか?」
「…ええ、お父様。私も立派なレディですわよ。好きな人の所にぐらい一人で行けますわ!」
普通、九歳の娘を一人で向かわせることはしないでしょう。貴族の小娘一人、屋敷に閉じ込めてしまえば途中で盗賊にでもあったのではないかで話が終わってしまう。それに相手は格上だ。なんの要求も出来はしない。
それに、まだ婚約者でもない相手の所に行かせるのは非常識すぎるし、それを要求するのもおかしい。ということにも気づかないらしい。
「ああ、それで公爵様からシア宛てに手紙が来ていたんだ。内容を確認するために一度確認させてもらったが、気にしないでくれ」
父から渡された手紙は確かに封が開かれていた。中を確認すると、さっき父が言っていた内容が一通り書いてあり、父が話さなかった部分を目にして、口を手紙で隠す。
そこの文章には父には伝わらない文章でこう書いてあった。伝わらないと言っても他国の言葉で書かれているわけではない。ただ、文章の含みが伝わらないだけだ。
『息子から人形など、古いものを大事にしていることを聞いた。私も妻にガラクタと呼ばれるものを集める趣味があってだな。その保存法について、君とならいい話し相手になると思ってな。無茶を言ってすまないが、検討をお願いしたい。』
今回、私を呼ぶ理由は屋敷で味方が誰かわかっていない私に配慮してのことでしょう。けれど、父についてこられても困る。だからこそ、私一人を要求した。という所でしょうか。
「お父様、エヴァンス公爵様にお返事の手紙を書いても?」
「あ、ああ。だが、中身は確認させてもらうぞ」
「ええ、もちろんです。エヴァンス公爵様に失礼のないようにしなければいけませんものね?」
「ああ、そうだ」
私のことを少し疑っている?公爵様に私が余計なことを言うことを恐れているのか、お姉様が私に代わって手紙を書くことを恐れているのか。どちらもでしょうか?
公爵様の含みに気づいていないのであれば、それも意味ないとは思うのですけどね。
ですが公爵様もこれ、九歳に出す手紙ですか?
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