気になる人
部屋から出て行った彼をずっと見つめる。それは扉を閉められてからも続けてしまっていた。
「ふふっ、アリシアも女の子ね」
後ろから声を掛けられる。女の子?それは当たり前のことじゃ…
「どういう意味ですか?」
「いいえ、でも…リオン様は少し大変よ」
「なっ!」
顔が熱くなるのを感じる。
「ちがっ、違います。私、そんなつもりじゃ!」
「あら、どんなつもりだったのかしら?」
「お姉様!からかわないでください!」
「ふふっ、ごめんなさい。だけどあなたがレオ様を好きにならなくてよかったわ」
その言葉は冗談ではなく、お姉様は本当にホッとしている顔をしていた。
「お姉様は本当に、あの男の…レオス様のことが好きなのですね」
「そうね。私がシェリアになって、全員が私を信じない。私には味方がいない。そう思って陰で泣いていた時にレオ様と会ったの。その時に『じゃあ、俺がその未来を変えてやる!俺はお前を裏切らない!絶対にだ!』って、そう言ってくれたの」
「…すごい自信ですね」
少なくとも私は絶対なんて言えない。何があるかわからない未来に絶対なんてないから。だけど…
「お姉様のことで…絶対と言い切ったのは悔しいですが、かっこいいですね」
「そうなの。その後に小説で私は愛称で呼ばれていなかった話をしたら、未来を変えた証拠として愛称で呼ばして欲しいって。まだ婚約者でもなかったのに、本当に私の突拍子のない話を信じてくれたんだって、そう思えたの。それからはレオ様のことが目を離せなくなったわ。今のアリシアと同じようにね」
「……」
違うって言ってるのに…
何を言ってもからかわれそうなので、睨むだけに止めておく。
「ふふっ、あなたが睨んでも可愛いだけよ。それとね、いいことを教えてあげる」
「いいこと…ですか?」
「ええ、貴族は政略結婚しかダメだと思っているかも知れないけれど、今は自由、というよりも能力を重視しているわ。だから爵位が合わないとかの問題もないし、元平民だからみたいなことも気にしなくていいわよ」
「そういうわけじゃないと言っていますのに…私とロック様は全くお姉様の想像しているようなことにはなりません!」
「ロック?…え、ええ、そっか。けどねアリシア。私がこんな風に笑えているように、未来はわからないのよ?決めつけるのは良くないわ」
ロックという言葉に詰まった?お姉様が?この家と同じ爵位なのに?そんなことがあるのだろうか。それに、未来がわからないと言われても…
「でもね、私嬉しいの」
「…嬉しい…ですか?」
「ええ、あなたは会った時から私に申し訳ないって感じで、自分のことを後回しにしているようだったから。私以外にも気になる人ができたのなら、あなたも自分のことをもっと大切にするでしょう?」
「そんなつもりは…」
ないと言えば、嘘になるかな。今でも私は父と母と一緒に処罰されるつもりで動いているのだから。この家を奪った犯罪者として…
「ないとしても、もっと自分を大切にして欲しいと思うの。あなたが私に自分を大切にしてというように、私もあなたを、アリシアのことを心配しているの。それだけは覚えておいて」
「…はい」
自分を大切に…か。お姉様が私を大切に思ってくれているのは嬉しいですが、私は…あなたにそう思ってもらえるような…ダメですね。以前、一緒にいてもいいと言ってもらったばかりなのに…
お姉様から奪ったものを返し終えるまでは一緒にいさせてください。
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