部屋での出来事

「おい!話を聞いているのか!」


 エヴァンス公爵が父を別室に連れて行った後、私はこの二人を部屋に連れて行こうとしているのですが、一人がとてもうるさい。黙らせるにも相手の方が爵位が上だし、説明しようにもここでは誰に聞かれるかわからない。


「おい!返事をしろ!」


「聞いていますわ。うるさいですわね。大人しくついて来てくれれば会えると言っているでしょう?そちらの方のように静かにできないのですか?」


「なっ、そもそもお前らが…」


「…レオス。静かにしておこう。それに、彼女は別だ」


「お前まで!…別ってどういうことだ?」


「はぁ、さっきの会話で気が付かなかったのか?彼女はシェリア嬢を守ろうとしていたんだよ」


「…リオン、お前…何を言っているんだ?こいつはシェリーのことをお人形と言ったんだぞ!何が守ろうとしているだ!」


「はぁ、着きました。ここに、お姉様が…」


「シェリー!」


 私の話の途中で扉を開ける。気持ちはわかるのですが…常識は持っていて欲しかったです。せめてノックをしてください。ですが…彼はこの部屋でお姉様が閉じ込められてひどいことをされていないかとても気になったはずです。


 少なくとも、今の状況は予想すらできなかったでしょう。私ですら想像していませんでした。だって、今日、できるだけこの部屋にレオス様を連れてくることは話していたのですから。来ることは知っていたはずです。なのに、それなのに…


 お姉様はどうしていつもと同じように、扉の前に座っているのですか?膝を手で叩いているのですか?ほらっ、あなたの婚約者様が意気揚々と扉を開けたのに固まってしまったではありませんか!?


「…シェリー、一体何をしているんだ…?」


「……」


 お姉様、婚約者が呼んでいますよ!返事ぐらいしてください!


「お姉様。レオス・エヴァンス様とロック…様を連れてきました。ちゃんとした説明がしたいと思うので、いつものようにしていただけませんか?」


 どうしても、いつものやつをやらせようとするんですか、お姉様。人前ですよ。それも男の人ですよ!お願いですから、しっかりと会話してください!お願いします!


「……」


 私の気持ちはお姉様には一切届くことなく、ただ無言で膝をポンポンとしているお姉様。


「お前、シェリーに何を命じたんだ!」


 これを私のせいにされるのは心外なのですが、放っていくわけもいきませんし…するのですか?あれを?人前で?


「申し訳ありませんが少しだけ部屋を出てもらっても?」


「いいわけないだろ!その間にお前が何をするかわかったもんじゃない!」


 そうです…よね。私もその立場ならそう言うでしょう。はぁ。


「オネエチャン、ツカレタヨー」


 以前よりもより片言になったのは許してください。こんな状況なんです。早く終らせて、真面目な話をしないと!


「お疲れ様。いっぱい頑張ったんだねー。それと、連れてきてくれてありがとう」


「「……」」


 黙らないでください!せめて何か言って!そうじゃなければ、もっとこの時間が続くんだから!


「お姉様、もうこのぐらいで…」


「だーめ」


「でも、レオス様が…」


「このままでいいんじゃないかな。レオ様、リオン様、いいですよね?」


「あ、ああ」


「俺は構わない」


 そこは構ってください。どうして許しちゃうんですか!どうして私が頭を撫でられながら大事な話をしなければならないんですかー!

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