エヴァンス公爵家
さて、今日はエヴァンス公爵家の方々と顔合わせの日なのですが、今、私の目の前ではとてもそのようには見えない光景が広がっています。
まずは、私と同じぐらいの男の子が二人。銀髪の子がこちらに向かって殴りかかってこようとしているのに対し、黒髪の子は銀髪の子を羽交い締めにして、こちらに来ないようにしています。
そして銀髪の大人の男性が一人。私たちを見ているというよりも何かを探しているような…
「オスカー殿、今日はシェリア嬢はいないのですか?」
「あ、ああシェリアですか?きょ、今日は少し体調が悪いと言って…」
「…そうですか。それは残念です」
父は嘘が下手ですね。それではお姉様に何かしていると言っているようなものではないですか。その証拠に私たちを見る目が変わりましたよ。悪い方に。
それにチラチラとこっちを見ないでください。事実をここで言えば満足なんですか?
「きょ、今日はシェリアなんかよりも、こちらの、我が最愛の娘のアリシアを紹介したいと思いまして…シア、挨拶しなさい」
「はい、お父様。お初にお目にかかります。私はアリシアと申します」
「シェリアなんかだと!シェリーは何処にいる!」
お姉様を愛称で呼んでいることから、彼がレオス様なのでしょう。この様子ならお姉様を裏切ることはしないでしょう。おそらく、エヴァンス公爵も大丈夫。後は…
「愚息が申し訳ない。それと、無断でもう一人連れて来てしまったことも謝罪しよう。彼は私の友人であるロック侯爵の息子でね。愚息の抑止力になる為に連れて来てしまった」
「そうですか、いえ、私どもは問題ありません」
友人…ね。さて、本当の所はどうなんでしょうね。ですが、彼のお陰でレオス様は動けていないのですから、抑止力にはなっていますね。物理的に…
さて、父も何か話をしたがっているみたいですし、昨日考えていたことでもしましょうか。せめて公爵様には伝わって欲しいですね。
「そちらが、お父様が言っていたレオス様ですか?とっても素敵な方ですね。それに……」
「シェリアは何処だ!」
「シェリアですか?奇遇ですね。私が持っているお人形もシェリアと言うんですよ」
「お人形…だと」
「はい。金の髪に青い目のとても可愛いお人形です」
「お前!」
「私は可愛い物好きなんです。……だから、可愛いお人形みたいな物があれば、捨てられたり、物置きに放って置かれるよりも、手元に置きたいんですよ。可愛いものなら特に…」
言いたいことを強調的に話すと、明らかに目つきが変わったのが二人。公爵様は一瞬、そして、黒髪の男の子は今も驚いた顔をしている。ついでにレオス様には伝わっていない。
「私の部屋に飾ってありますの?見ますか?」
「シア…それは…」
少々焦り過ぎてしまった。誘うのはもう少し父の気が逸れてからの方が良かった。どうにかして気を逸らさないと…
「オスカー殿、押しかけておいてすまないが私はこの後すぐに用事があるんだ。だから子供たちは子供たちどうし、仲良くしてもらって、私たちは仕事の話をしたいと思うのだが」
「はい!喜んで。シア、あまりアレについては…」
「わかっていますわ、お父様。私、レオス様のことが気に入りましたもの」
ええ、お姉様のことに対してこんなに怒っているのだもの。知った事実を捻じ曲げることなく、公爵様に伝えるでしょう。
「そうか!」
「はい。だから余計なことはしませんわ」
だって、お姉様の事実を伝えることは余計なことではないですもの…私にとっては…ですが。お父様にとっては知ったことではありません
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