罰
アーシャ先生がお姉様のお母様であったことを知ってから数日が経った。
「お疲れ様でした」
食事の後の恒例になったアンの言葉を聞きながら部屋に戻る………前に、扉の前で止まる。
「どうしたのですか?」
「楽しそうね。アン。私と代わる?」
「いいえ、これはアリシア様の罰ですから。それに…お嬢様も喜んでいますよ?」
一日に三回、あの父親と母親と一緒に食事をしなければならない。それもずっと笑顔で煽てながら。唯一の楽しみはジャンのご飯が美味しいということだけなのです。
それに加えて、私にはお姉様から謝りすぎる罰として命令されていることがあります。その内容がとても恥ずかしいのです。
「はぁ、いつになったらお姉様は飽きてくれるのかしら?」
「おそらく飽きることはないと思いますが」
「それだと私が困るの」
小言で愚痴りながらも扉を開ける。部屋の中にはこちらを向いて地べたに座っているお姉様がいた。それも嬉しそうに、膝を手で叩きながら。
「お姉様、今戻りました」
「……」
何回か違う言葉を試してみたけれど、どれも反応してくれない。
「…お姉ちゃん、ツカレタヨー」
そう言ってお姉様に抱きつく。少し片言になったとしても気にしない。言えばいいのです。言えば…
「お疲れ様。いっぱい頑張ったんだねー」
嬉しそうに私の頭を撫でるお姉様。これが私の罰。私がただただ恥ずかしい思いをするこれが罰なのです。
「もう罰は終わりにしていただけませんか?」
「だめよ。まだ反省していないもの」
「もう十分反省しました!」
「う〜ん……まだダメ」
このやりとりも続いている。一度考えたふりをするのもいつものことだ。辞める気はないということなのでしょう。いつもはただお姉様が撫で疲れるまで待つのですが、今日は大事な話をしなければなりません。
「はぁ…お姉様、明日にエヴァンス家の方々が来るそうです」
「…そう。明日…ね。それにエヴァンス家ということは、レオ様だけでなく、レオ様のお父様もいらっしゃるのね」
「…はい。そう聞いています」
「あの人は私をいないものとして扱うわよね?私はどうやって参加しようか?いっそ本当にアリシアのお人形として参加しようかしら?」
「そんなことをしたらお姉様自身がどう思われるのかわかっているのですか!万が一、相手がお姉様のことを貶めたいと思っていたら、他の家にまで根も葉もない噂を流されるのですよ!」
お人形と言い出したのは私だけど、それはこの家でお姉様が少しでも動けるようにしただけであって、本当は不本意なのに。それをお姉様が言い始めてしまうなんて…
「ご、ごめんなさい」
「お姉様がそういうことを言ってはいけません。『私が、家を乗っ取った男の娘が勝手にお姉様のことを人形と呼んでいる。』という風にしないと…」
そうすることで、お姉様は人扱いされていないという同情を買える。それに、私が相手の前でお姉様をお人形と呼ぶことで相手の動きや考えがわかるはず…
「それならアリシアが…」
「私は何もないですよ。全部事実なのですから。お姉様が心配する必要はありません」
ええ、私のことなんて心配してくださらなくていいのです。その気持ちだけで私は十分ですから。
「お姉様は自分の心配をなさってください」
だって、もしかしたらお姉様の婚約者がお姉様を裏切って、私の婚約者になると言い出すかもしれないのですから…
「…わかったわ」
願わくば、お姉様の婚約者が裏切らないことを。そして、エヴァンス家がお姉様にとって味方でありますように。
「それじゃあアリシア、一緒に寝ましょう」
「……」
これは私がソファーに一人で寝ようとした罰だそうです。
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