意外な繋がり

「う〜」


「ふふ、アリシアはかわいいなー」


 私は今、お姉様に背中から抱きつかれている状態でいる。それをアンとマリアに温かい目で見られている。とても恥ずかしい…


「お姉様、離してください!」


「ダーメ」


「そんなっ!」


「いいじゃないですか。そうやってみると、本当に仲のいい姉妹のように見えますよ」


「う〜、恥ずかしいです…それに、人前で泣いてしまうなんて…アーシャ先生に何て言えば……」


 アーシャ先生には、感情を大きく外に出さないように注意されていた。貴族社会はいつ、どこで、何を言われるかわからない世界だから、弱みを見せないためにどんな時でも笑顔を作るよう言われていたのに…


「えっ」


 お姉様から驚いたような声が聞こえる。何が不思議だったのだろうか?


「アリシア様、そのお名前を何処でお聞きになったのですか?」


「えっ、アーシャ先生のこと?アーシャ先生は孤児院で勉強を教えていてくれた時に色々とお話ししたの。貴族の会話や物事の考え方を教えて貰ったの。一年ぐらい前から会えなくなっちゃったけど、また会いたいな」


 私がそう言うとみんなの顔が暗くなる。どうしてだろう?そう思ってお姉様の顔を見てみると、その寂しそうな顔はとてもアーシャ様に似ていた。


「もしかして…アーシャ先生は…」


「私のお母様よ。こんな風にアリシアと繋がっていたなんてね」


「あのっ、……ごめんなさい」


「もう、アリシアはどうしてすぐに謝るかな。あなたが悪いことは何もないでしょ!だけど、お母様が言っていた私と同じくらいの子で、とても賢い子があなただったなんてね。まるで小説のようね」


「アーシャ先生は私のことを知っていたのでしょうか?私はアーシャ様に話しかけられてから、勉強を教えて貰ったのですが…」


「そうかも知れないし、たまたまかも知れない。お母様は私よりも多くのことを考え、行動していたすごい人だもの」


 アーシャ先生はどうして、あの時私に話しかけたのだろう。ただ孤立していた私を輪の中に入れるためなのか、それとも、私に知識をつけて、父のようにならないためなのか…


「だけど、これでアリシアの行動がお母様に似ている理由がわかったわね。まさか、お母様に直々に教えてもらっていたとは思わなかってけれど…、二人して私を守ってくれてるなんてね」


 アーシャ先生が以前言っていた言葉を思い出す。言うべきなのだろうか?その言葉のままなら、アーシャ先生はお姉様を傷つけていると思っていたのだろう。だけど、お姉様がどう思っているのかどうしても気になってしまう。だから…


「『どうしても守りたいものがあるのならば、自分で攻めることも大切なの。たとえ、その行動でその人に恨まれたとしても…ね』」


「それは…」


「アーシャ先生と最後にあった日、少し寂しそうに話していた言葉です。お姉様。お姉様はアーシャ先生のことを恨んでいますか?」


「まさか!恨んでいるわけないわ。だって、お母様の行動理由は知っているし、そのおかげで私は今を生きているのだもの。だけど、わかっていたのならお母様も抵抗してくれたらよかったのにね…」


「それは…」


「この話はここまで!もう寝ましょう?」


 まだ話せない。もしくはアーシャ先生の死に私が関わっているか、それとも…父が関わっていることなのでしょう。だけど、それを知って私がどう思うかがわかるからこそ誤魔化したのでしょう。


 父をこの家から追い出せればいいと思っていましたが、アーシャ先生の死に父が関わっているのであれば必ず罪を償わせてあげます。お姉さまの為にも…

 

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