お人形

 私のお願いに周りにいる人から視線が集まる。当たり前だよね。私も聴く側だったら、頭がおかしいって思うもの。

 だけど、この人なら叶えてくれるだろう。


「シア、生きているお人形とは何だい?」


「そのままですわ、お父様。お姉様、いえ、シェリアを私のお人形にしたいと思ったの。だってこんなに綺麗なのに、ずっと押し入れに入れておくなんて、もったいないわ」


「だが…」


「大丈夫ですわ。私の部屋に置いておいたら、お父様の目にも入りませんし、寝るところは……」


 あれは、お姉様が見ていたソファー…

 あの大きさのソファーなら、寝れそうかな?


「そうですね。このソファーを気に入っているみたいなので、これに寝かせればいいでしょう。ちょうど人一人分寝れそうな大きさですし。ねっ、ダメですか?」


「それは…それでシアに何かあったら。そいつがシアに何かしないという保証が…」


「では、監視をつければ良いのですね。そこのマリアはどうでしょうか?さっき、シェリアのことを呼び捨てにして、そのソファーを一人で持って行かせようとしていましたよ」


「マリア、本当か?」


「…はい。お嬢様の言う通りです。旦那様に無視する様に言われていましたが、何やら不審な動きをしていたので、呼び止めました。運ぶのを手伝うように言われましたが、手伝う理由はないので、一人ですればいいと言ってしまいました。指示を無視してしまい、申し訳ありません」


 マリアは私の意図に気づいてくれたみたい。けど、アンにはまだ伝わっていないかな。マリアの発言に一番驚いてる。お姉様はずっと黙ってるってことは気づいてくれたのかな?


「…わかった。マリア、そいつがシアに何かしようとしたら、なんとしてでも止めろ。最悪殺してもいい。わかったな」


「…はい」


 最低…殺してもいいって、お姉様だって自分の娘なのに…


 何があったらそんな考えになるのか、理解できない。


「ありがとうございます!お父様、大好き!」


「ああ、私も大好きだよ。そのソファーはあとで持って行かせるから、部屋に戻っていいよ」


「はーい。アン、マリア、私の部屋に戻るわ。それと…」


 お姉様が私を見上げる。ごめんなさい、お姉様。私にはこれしか思いつきませんでした。お姉様ならもっといい方法があったかもしれませんが、これで我慢してください。


「行きましょう。私の大切なお人形さん」


 思ってた以上に低い声が出たことに自分でも驚く。私ってこんな低い声が出たんだ。それに…


 お姉様が少し、私を怖がっているように見える。それもそっか。私のこの行動は、物語と同じでなくても、お姉様が知っている未来には近づいたはずだから。


 怖がらせてごめんなさい…お姉様。

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