アリシア・アースベルト

「何をしているのかと聞いているんだ!」


 怒鳴らなくても聞こえている。それに、どうしてこっちに来たんだろう。ずっと、お母さんの相手だけしていればいいのに……


「シア?泣いているのか!お前たち、シアに何をやった!」


 私が泣いている原因が、お姉様たちに当たる。私は迷惑をかけてばっかしだな。あの人は絶対にお姉様の話を聞かないだろう。

 そして、私がお姉様の所為ではないと言ったところで、脅されていると思われるだけかな?


 だから、私はこれからはお姉様に嫌がらせをしよう。私がお姉様に嫌がらせをしていると知れば、父も私が何かされているというような勘違いはしないだろう。

 お姉様、私はこれから、お姉様の妨げになります。ですから、私の言葉は気にしないでください。

 私も、父と母と一緒でお姉様に必要のない人です。だから、全て無くなれば良い。


「ごめんなさい。お父さん。私、少し怖かったの」


「やっぱり、そいつに何かされたか!」


「違うの、食事をしていた時に話していたでしょう?お父さんはお母さんと私を選んでくれたって。それって、私はアースベルト家の娘になるってことでしょ?」


「ああ」


「それがね、怖かったの。私は平民で、お父さんと違って、貴族のことなんて知らないから。だから、お姉様、シェリアをお姉様として、私は何もしなくて良いようにしたかったの」


 私は抱きついていたお姉様をそっと押し立ち上がる。話している時に押されると思っていなかったお姉様は、私を驚いた顔で見上げていた。


 私はお姉様を見下ろしながらも、この演技を続ける。


「でもね、違ったの。私はお父さんが選んでくれたのだから、もっと頑張らないといけないって思ったの。だから…ね、お父様…私、これからこの家に、お父様の顔に泥を塗らないように頑張るわ。だから、一つお願いがあるの…」


「おお、わかってくれたかい!よかった!それで、お願い?何でも言っていいよ。今まで一緒に入れなかった分、これからはわがままをいっぱい言って良いんだよ?」


 気持ち悪い。でも、この感情を表に出してはいけない。誰にも悟られてはいけない。

 私は今日、アリシアを捨てて、アリシア・アースベルトとして、父と母と一緒にお姉様の前から消え去る。

 そのためには、何としても、お姉様の監視をお父様から外さないといけない。


 だから、私は悪魔になろう。普通の人なら思いもつかないような願いを口にしよう。

 だって、私はこの人たちの子供なのだから。


「私ね、生きているお人形が欲しいの」

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